第50話 これからの事

「おはよう…。」


眠そうに、キッチン兼、食堂にセイラムが入って来た。


「おはよう…。」


朝は、セルフ…。

皆、それぞれ好きな時間に起きてきて、思い思いに朝食を作って食べる。

と言っても、ノア兄ちゃんは動けないのでいつも私が、朝食後様子伺いに行って欲しいもの用意してる感じ…。


「ついでに、食パン焼こうか…?」


「サンキュー。」


目玉焼きとサラダも付けて、セイラムの所に持っていく。


「「頂きます。」」


「昨日、ノア兄ちゃん、どうだった?」


「少し、良くなったって…。さくらのパンも喜んで食べてたよ…。」


「ほんと?……よかったぁ…。」


ノア兄ちゃん、あのパン、食べてくれたんだぁ…。


「あ…ぁ…。また、様子見に行っておいでよ…。」


「うん。セイラム、あれがとぉ〜!」


それもこれも、セイラムが歌ってくれたからだ…。


「ちょうど、二人揃ってますね。」


優さんが入って来た。

セイラムと私は、同時に目を合わせそれから優さんを見た。



優さんの話は、こうだった。

優さんの家に来て、10日たった。

そろそろ、この星の星人として生活する為、この星の現状、文化、生活水準を勉強しなければならないという事だった。

今から、10日間でマスターしなければならないらしい。

つまり、10日後には、優さんの家を出なければ行けなくなった。

ノア兄ちゃんは、体調が回復次第という事になった。

3人足並み揃わないのは、寂しい…。

ノア兄ちゃんの体調を思うと仕方ない事なんだけど…。


「はぁぁぁ…。」


「どうした?さくら…。」


ノア兄ちゃんの声で我に返る。

そうだった。

今、ノア兄ちゃんの所に来てるんだった。


「あ…っ、何でもないの…。お腹すいたなって思っただけ…。」


「なんだそれ…。さくら…。」


ふふふとノア兄ちゃんが笑顔になる。

その笑顔に、笑顔で返す。

うまく笑顔を、作れているだろうか…。


「あっ、そうそう…。パン、食べてくれたってセイラムに聞いたけど…。」


「あぁ…。美味しかったよ…。さくら、すごいね…。すごいと言えば、セイラム、本当に神官だったんだね…。」


「そうなんだぁ〜。ドームで歌っている様は、神秘的でとっても素敵でした…。」


あの頃をふと思い出す。


「あの歌のおかげで、食欲が出たんだ…。で…、そのタイミングで、セイラムがパンを持って来たから嬉しかったなぁ…。」


「タイミング、良かったんだぁ。」


ほんと、良かった…。

笑顔だったノア兄ちゃんの顔が急に暗くなる。


「いよいよ出発に向けて、動くみたいだな…。」


真剣な面持たを私にぶつけてくる。

え……。

……。


「気を付けろよ…。」


何も言えない私に笑いかけて、私の頭を軽く叩く。


「…ど……。」


どうして、知ってるの?

言葉にならない。


「優さんが俺に言ってきた。二人は、出発させるって…。」


ただただ、ノア兄ちゃんを見詰める。


「俺は、留守番だってさ…。」


明るい声に聞こえる。

でも、そうじゃない。


「…セイラムとはどうなんだ?」


外から入った風でカーテンが揺れた。


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