第48話 優さん
「あっ、いけない…。」
抱き合ってしばらくして、大事な事をを思い出した。
「どうした?」
優しく私の顎を拾い上げ、顔を近付けてくる。
そこをサラリと交わし、配膳ワゴンの所にいく。
「ノア兄ちゃんと優さんの所に行かなくっちゃ…。」
「何で、ノアさんの所に?」
目に見えて不機嫌になる。
「パンを持って行こうと思って…。」
「別に…、今日じゃなくても…。」
ムスッと拗ねるセイラムがかわいい。
背伸びをして、セイラムの頬にキスをする。
「焼き立ての方が美味しいから…。」
そう言って、部屋を出ようとする。
「ちょっと待って…。さくら…。ノアさんの所には俺が行く。」
配膳ワゴンからトレイを取り出し、パンのカゴとカップに紅茶を入れ、のせる。
「ありがとう。じゃあ、私は優さんの所に行くね。おやすみ〜。セイラム…。」
配膳ワゴンを押して、部屋を出ようとする。
「え…っ!さくら…。こっちに帰って来ないの?」
「だって…、遅くなるでしょ?セイラムも神歌の後だから休まないと…。」
「え…。あ…、あぁ…。」
テンションだだ下がりセイラムを後にする。
コンコン…。
優さんの部屋のドアを叩く。
「どうしたのですか…?」
優さんがドアを開け、素早く廊下に出てドアを閉める。
その動作に、何となく部屋に入って長居できる雰囲気ではなかった。
「パン焼いたので、優さんもどうかな…と思って…。」
パンの入ったカゴだけ突き出す。
「あぁ…。ありがとうございます…。」
少し、柔らかい表情になる。
「ただ、私はアンドロイドなので、食べても食べなくてもどちらでもいけるのでお構いなく…ですよ…。」
「あ…、そうでしたね…。」
頭を搔く。
「せっかくですから、頂きますね…。」
そう言って、部屋の中へ消えて入った。
……。
なんだかんだいって、やっぱ謎な人…。
……。
さて、帰ろ…。
優さんの部屋から離れた。
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