第42話 セイラムのご乱心
パタン…。
び、び、びっくりした…。
ノア兄ちゃんの部屋のドアを閉め、そのままそのドアにもたれかかる。
ど、どうしちゃったんだろう…。
…ノア兄ちゃん…。
そっと、唇に手を当てようとした時…、
「さくら…っ。」
私を呼ぶ声がした。
慌てて、手を引っ込める。
「セ、セイラム…。どうしたの…?」
「どうしたの?じゃないよ…。ノアさん、どうなんだ?熱下がった?」
そう言いながら、近付いてくる。
「う〜ん。まだ、下がらない…。」
「そうかぁ…。」
私のすぐ目の前へ立つ。
セイラムの視線を感じるが、目線を合わせられない。
……。
いきなり私の両肩を掴む。
「な、何…?」
と、顔を上げた瞬間、セイラムが顔を近付けてくる。
!!!
寸前のところで、横を向いてかわす。
「な…、何…す…」
「ちょっと、来いっ!」
そう言って、私の手を強引に引っ張って行く。
私は体勢を崩しながら、小走り状態でセイラムの後を追う。
ある部屋のドアの前で止まる。
そこは…、
セイラムのへ…
勢いよくドアを開けられ、部屋の中へ引っ張られる。
ベッドの所で突き飛ばされ、ベッドへ倒れ込む。
突き飛ばされた所がベッドだから良かったものの、別の所だと怪我してるところだった。
「ちょっと、危ないじゃない…。」
起き上がろうとしたら、そのままセイラムが覆い被さってくる。
え…、え、え?
何…何…何?
私は起こしかけた上体を寝かせるしかなかった。
「セ…、セイラム…?」
「何があった?」
「え?」
「ノアさんと何かあっただろ?何があった?」
「……。」
めちゃくちゃ怖い顔でこちらを見る。
初めて見る顔だ…。
「何があった?」
じっと、私の目を見てくる。
「な、何も無い…よ…。」
セイラムの瞳を見ながら、答えるが「よ」のところで目を逸らしてしまう。
「…やっぱり…。何かあった…。」
「だから、何も無いって!」
今度は、目を逸らさずに言えた。
しばらく、セイラムの目を見る。
「……そ…、さくらが何も無いって言うなら、俺はそれを信じるしかないけど…。」
尖った声で返ってくる。
セイラムの顔が近付いてくる。
え?
このままじゃ、キスされる…。
必死で、セイラムの胸を押す。
お、重い…。
「ちょ、ちょっと…、セイラム…。」
「キス…、したい…。」
セイラムが力ずくで迫ってくる。
だ、駄目だ…。
顔を逸らしたので、間一髪で唇との接触は、免れた。
が、しかし、今度は私の首すじに、唇を押し当ててくる。
「ひゃ…。」
思ってもない声が私から出てくる。
「…ちょっと…、…セイラム…。」
「ちょっと、キスしたいだけだから…。ね…さくら…。セイラの時は、させてくれたじゃん…。」
私の首すじのところで喋られるので、セイラムの息が私の首すじをなぞる。
恥ずかしくて、身体中が熱くなる。
「私、別に植物の声…、聞きたく無いんですけど…。」
植物の声…。
セイラ様…。
!!
そうだっ!
「セイラ様!じゃなかった!セイラムッ!」
パシパシパシ…。
とセイラムの左肩を軽く叩く。
「……。」
セイラムは、全く無反応で、ピクリとも動かない。
「ね…、セイラム…。」
パシパシパシ…。
もう一度、軽く叩いてみる…。
「……はぁぁぁ…。」
私に覆いかぶさったまま、大きいため息をつく。
「セイラムって…。」
「あ〜…、もうっ!わかったよ!」
そう言って、体を起こす。
二人並んで、ベッドに座る。
「…で…、何?」
「あのね、セイラム…。しばらく、セイラ様になってみる気は、な…い?」
恐る恐る聞いてみる。
「な、な、なにぃ!!」
ものすごい顔で睨まれる。
……。
……ですよね…。
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