第40話 番外編 俺(ノア)の幸せ ③

「えーん…。ヒッ…。えーん…。」


……。

誰かが泣いている…。

サライと別れてから、何日経っているのだろう…。

俺は、飯を食ったんだろか…。

睡眠を取れているのだろうか…。

俺は、今、立っているのか座っているのか…。

何も考えたくない…。

宇宙船にのせられて、疎開先の星へ向かっている。

俺はセディオンという星に行くらしい。

だだっ広い部屋に2才から10才までの子供達が何十人と居て、それぞれが思い思いに遊んだり、勉強したりしている。

2才位の子には、大人の係の人が付いている。

子供達の左耳には、地球のデータが入っている青のピアスがある。


「はぁぁぁ…。」


深いため息…。

何回目だろうか…。


「ヒック…、ヒック……。」


…、まだ、誰か泣いてる…。

ふと、声の主を探す。

……。

そこには、ちょうどアンくらいの女の子がいた。

綺麗な亜麻色の髪が背中まである。

泣きすぎて、目の回りが真っ赤になって腫れている…。

……。

…可哀想に…。

俺は、ユラリと立ち上がり、その子の前にしゃがむ…。


「どうしたの…?」


そう言いながら、顔の前に垂れている亜麻色の髪をそっと女の子の耳にかける。


「…ヒッ…ク…。」


女の子は泣いてばかりで、答えない。


「なんで泣いて…」

「ダメだよ〜。泣いてる女の子になんで?って聞くの〜。」


俺と女の子の間に入ってきた奴がいた。

声の方を見ると、俺と同い年くらいの女の子だった。

黒髪でショートボブで、いかにも活発そうな子。


「…お名前、なんて言うの?」


彼女は、俺と同じようにしゃがみ、優しく笑いながら、女の子に問う。


「……。」


女の子は、涙目のまま、彼女の顔を見る。


「あ、私は、メイ…。こっちは…、」


そう言って、俺を見る。


「あっ、俺は、ノア!」


「あなたは…?」


そう言って、彼女はもう一度、女の子に声をかける。


「……ら…。」


「え…?」


「…さくら…。」


女の子は、ポツリと答えた。

それが、俺とさくらの出会いだった。



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