第37話 ノア兄ちゃん…?

ゴール地点にあった小屋、優さんの家は、凄かった。

外見は、小さな小屋…。

私達が開けても、何の変哲もない小屋…、何も無い。

ところが優さんが開けたドアで小屋に入ると優さんの家に繋がる。

一部屋だった小屋が奥に繋がるドアがあり、そこを開けると、両側に部屋があった。

私達は、一室ずつ部屋を与えられた。

優さんの部屋は一番突き当たり。

台所もお風呂もトイレもある。

この間まで砂漠生活してたので、めちゃくちゃ嬉しい…。


ただ、心配事が一つ…。

私達が小屋に着いてから、5日経とうとしてるが、ノア兄ちゃんの体調があまり良くない…。

というか、どんどん悪くなっていってるような…。


コンコン…。

ノア兄ちゃんの部屋のドアを叩く。


「ノア兄ちゃん…。」


小さい声で、部屋の外から呼んでみる。

返答は無い…。

眠っているのかもしれない…。

カチャ…。

静かにドアを開ける。

ノア兄ちゃんはベッドで上体を起こし、窓の外を見ていた。


「ノア…兄…ちゃん?」


もう一度、声掛ける。


「あ、あぁ…。さくらか…。」


こちらに振り向いて、優しく笑い掛けてくれる。


「体温測ろっか…。」


「あぁ…。」


ピピ…。


「38度1分…。なかなか下がらないね…。何か、食べられる?食べたいものとか…。」


「…ゔ〜ん。ごめん…。あんまり…。」


苦笑い…。

……。

ほんとは、「もっと食べなきゃ…」とか言うものだろうけど…。

私は言えなかった。

ただ、私はノア兄ちゃんの左手を両手で包み込んだ。


「ありがとう…。さくら…。やっぱり、優しいな…。」


優しい笑顔になる。

……。

ノア兄ちゃんは、私が飲み込んだ言葉が分かったようだった。


「今だけだから…。そのうち、食べられるようになるから…。そんな、心配するな…。」


私の頭を優しく撫でる。

ポロポロと涙が出て、頬を伝っていく…。


「あ…、あれ…?」


泣きたくないのに、どんどん涙が溢れてくる。

誤魔化そうと、笑顔を作ろうとするが、作れない…。

下を向く…。


「さくら…。」


不意に呼ばれ、顔を上げる。

ノア兄ちゃんが私の頬を伝う涙に口付けをする。

右の頬から瞳へ、左の頬から瞳へ、ノア兄ちゃんの唇が這う。


「ノ…アに……。」


ノア兄ちゃん?と言いたかったが、声にならなかった。

ノア兄ちゃんの唇が、私の唇を塞いだからだ…。

優しい、優しいキスが続く…。

混乱する…。

……。

前にノア兄ちゃん…、「キスは、誰でも彼でもするものではないっ」て怒っていたような…。

あの話は、どうなったの?

それとも…、

ノア兄ちゃんは、いいの?


「ノ……。」


ノア兄ちゃん…って言いたいのに、優しくノア兄ちゃんの唇がそれを阻む。


「…ノ……ア……。」


いつの間にか、ノア兄ちゃんのベッドに引き摺りこまれ、私の上にノア兄ちゃんがいる形となる。

……。

ノア兄ちゃんの視線と私の視線がぶつかる。

瞬間、ノア兄ちゃんの目が見開かれる。


「…ご、ごめん!さくら…。」


さっと、私の上から体を退ける。


「え…っ。あ…っ。うん…。」


私は、慌ててベッドから降りる。


「ご、ごめん…。さくら…。俺、ちょっと寝るわ…。」


「あっ。う、うん。じゃ…。私、行くね…。」


慌てて、ノア兄ちゃんの部屋を出る。

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