第31話 敵か味方か…

「やっぱり、暑い…。」


砂漠の昼間は、やはり暑い…。

ただ、最近の足元の砂の様子が変わってきた。

段々、砂が荒くなってきた…。

なので、歩き安くは、なってきている。

疲労の度合いも違ってくる。

ただ、暑さは……、慣れない…。


ふと、後ろを振り返る。

セイラムが、立ち止まって、空を仰いでいる。

優しい笑顔になる。

そして前を向き、私と目が合う。


「さくら…、もうすぐ……、近いかも知れない…。」


「え……。」


「ノアッ!休憩しよう…。」


先頭を歩いているノア兄ちゃんに、聞こえるように大声を出す。




「急にどうした?休憩って言い出して…。」


ノア兄ちゃんがミネラル水を飲みながら、セイラムに訪ねる。


「あぁ…。そろそろ近い…。現実味帯びてきた…。」


「…そうか……。セイラムの見立て?聞き立て?では何日くらい…。」


「う〜ん…。二日くらい…。間にまたオアシスあるから、今まで通りのペースで行けそう。」


「ようやくかぁ…。……まぁ、期待半分にしとかないとな…。」


「何それ…。俺の耳を信用してくれてない感じ?」


「アハハ…。そうじゃない。そうじゃないんだよ…。植物があっても、我々の天敵になるようなモノが居るかもしれないだろ…?」


「…え〜っ。一難去ってまた一難かぁ。」


はぁ…。と、セイラムは項垂れる。


「ま…、警戒するに越したことはないって事だ…。」


「……、それはそう…だけど…。」


「さぁ…。出発しよう…!」


すくっとノア兄ちゃんが立ち上がる。



次の日…。

足元は、砂漠からちらちらと草が見える土に変わりつつあった。

足取りが軽くなる。

この星に、こんなところがあったなんて…。

今まで、あんな狭いドームに居たのが信じられない…。

ただ私達が住めない理由が、ここにはあるはずだ…。

だから、私達はドームで生活していたのだ…。

警戒しなければ…。

本当の闘いは、これからかもしれない。

……。

気が引き締まる。


「お、お、おいっ!何かある!」


先頭を歩いていたノア兄ちゃんが、叫ぶ。

私の後ろを歩いていたセイラムが、ノア兄ちゃんの所に走る。


「ほんとだ…。」


ノア兄ちゃんから、双眼鏡を受け取り覗いたセイラムが呟く。

一通り確認して、セイラムが私に双眼鏡を渡す。

二人が見ていた方向を覗く。

……。

確かに…何か…ある。

自然界に似つかわしくない、角ばったものが広い平野の中にあった。

あれは…。

建物?

そう、建物のようなモノが建っている。


「建物?」


声に出して、二人の顔を見る。

うん。と、二人共頷く。

明らかな人工物の出現。

吉と出るか凶と出るか…。

敵か味方か…。

……。

いや、私達は、ドームで生活していたんだ…。

人が生活出来る環境は、無いはずだった。

敵…なの…か…?

セイラム、ノア兄ちゃん、順に目を合わす。

二人の目に、歓喜の色は無く、緊張で強ばった様子がよく分かる。

私と同じ気持ちみたいだ…。



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