第28話 黒い影の正体

「さくら、大丈夫か?」


セイラムの声がすぐ近くでする。

顔を上げると、セイラムの顔がすぐ近くにあった。


「セイラム…。」


「さくら…。」


セイラムも私の名を呼ぶ…。

セイラムの顔がより私に近付いてくる。

後、2cmで唇……。

というところで、


「さくら!新鮮な鳥肉にありつけるぞ…。」


ノア兄ちゃんの嬉しそうな声が聞こえる。

セイラムの肩越しに声のする方を見る。

ナイフの刺さった大きい鳥を持ち上げている。


「ノア兄ちゃんっ!その格好っ!」


大きい鳥を嬉しそうに持ち上げているのはいいが、そのノア兄ちゃんの格好が腰にタオル1枚巻いただけの状態だった…。

筋肉で分厚くなっている胸板に、引き締まったお腹…。

タオルからあらわになった太く盛り上がった太もも…。

何とも…。じゃなかった…。

恥ずかしいっ!!


「何言ってんだ?さくら。セイラムだって…。」


え?

私は改めて、抱き締められているセイラムを見る。

!!!

ギャーッ!

心の中で叫ぶ…。

セイラムもタオル1枚だった…。

何で、今頃気付くのぉ…?…私…。

色白で細いセイラムの胸板…。

これはこれで…色気が…。

……じゃないっ!


「す…すみません…。慌てて、セイラムから離れる…。」


顔がめちゃくちゃ火照ってくる。

パタパタと手で顔を仰ぎ、風を送る。


「仕方ないだろ…。二人で風呂入ってる時に、悲鳴が聞こえたんだから…。威嚇のつもりで投げたナイフがまさか当たると思ってなかったな…。」


呑気にノア兄ちゃんがブツブツ言う。


「そんな事!どうでもいいから、早く服きてぇ~っ!」


私の声がオアシスに響く。




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