第27話 二人きりにしたくない問題

「嫌だ…。俺は入らないっ!」


「セイラム、どうして…?入った方がスッキリするよ?」


「そうだよ…。水浴びするだけでもしたら、ダイレクトに体冷やす事にもなるし…。お前は、入っとく方がいいぞ…。」


私が水浴びしてきた後、さっきからセイラムに勧めているのだが、どういう訳か行きたがらない。


「別に…、いいじゃないか……。」


セイラムが私とノア兄ちゃんを見て、フイッと横を向く。


「バ、バカか…?俺は、お前じゃない…。何もしねぇわ…。」


ノア兄ちゃんが何かピンときたらしく、セイラムに訴える。


「そ、そんな事…、……分からないじゃ…ない…か…。」


めっちゃ、小さい声で反論する。


「そもそも…、そんな風呂入ってる短い時間でが出来るってんだ…。」


「とにかく、俺は、ここ(さくらの側)を離れるつもりは無い。」


さっきから、何を二人して言い合いしているのだろう…。

グチグチ…。

男の癖に…。

イライラしてきたっ!


「もうっ!二人で行って来ればいいじゃんっ!そしたら、少しは仲良くなるんじゃない?」


そう言って、二人分のタオルを押し付けて、二人の背中を押した。


「「えぇっ!!」」


二人揃って、大声を挙げる。


「いや!それは、まずい。まずいぞ、さくらっ!何かあったら、どうするんだ?」


ノア兄ちゃんが慌てて引き返そうとする。


「こんなところ(オアシス)で何が、起こるってのよっ!少しの間だけの話だし、一人で大丈夫だよ。だから、行って…。」


そう言って、無理やり背中を押し、嫌がる二人を池に向かわせた。



二人がお風呂に行ってから、10分程たった頃…。

テントの下でボーッと座ってると、数メートル先で、割りと大きい黒い影がサッと通った様な気がした…。

……?

う…ん…?

何か、通った?

……。

そんな訳無いか…。

ここは、砂漠のど真ん中…。

何か居るはずがない…。

何か、私達の荷物が飛んでいったのか?

いや…、風が無いからそんなはず無いか…。

……!!

また、通った!

一体何?

思わず、テントの影から出る。

瞬間、大きい長細い影が、私のすぐ側を通り過ぎる。

何?

影の正体を目で追う…。

あれは…、

…と…り…?

その黒い影は旋回し、私に向かってくる…。

え?

やばくない?

このままじゃあ…、ぶつかる…?


「キャ、キャーーッ!」


思った程、声にならない。

このままじゃ、ぶつかってしまう。

頭を両手で覆い、しゃがむ。


「「さくらっ!」」


二人の声が聞こえたような気がした瞬間、


キーー

動物の鳴き声のような音と、私を覆うように何かが被さる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る