第25話 セイラムの回復

「セイラム…!」


セイラムが、うっすらと目を開けた。


「俺は…、」


「動かないで…、そのままで…。」


起き上がろうとするセイラムの右肩を触り、制す。


「ノア兄ちゃん!セイラムが目を覚ましたよ…。」


「お…っ。覚ましたか…。良かった、良かった。」


ノア兄ちゃんの顔を見るなり、セイラムは起き上がる。


「ノア…、いやノアさん…。すみませんでしたっ!」


点滴が揺れる。


「え?なになに?どうした?」


セイラムの行動にびっくりする。


「俺が変な意地張って、こんな事になってしまって…。」


「なんだ…。分かってるじゃん…。」


さらりと言う。


「……。」


セイラムは、黙ってしまう。


「アハハハ…。命あるんだから、そんな深刻になりなさんな…って…。」


明るく、笑い掛ける。


「す、すみません…。」


小さい声で、小さくなってしまう。


「まぁ、でも。これでわかっただろ?無理は駄目だって…。」


「…はい…。」


「でも…、良かった…。だいぶ、良くなってきたみたいだな…。」


本当に…。

瞳にいつもの潤いが戻り、深い藍色が蘇る。

良かった…。


「ほんとだよ…。めちゃくちゃ心配したんだからね…。」


「すまん…。」


「じゃあ、もう1時間程休んだら、出発しようか…。さっきより暑くなってるから、充分気を付けよう。」


「「はいっ。」」


1時間後、私達は出発した。

オアシスが近いという事で、セイラムが持つはずの荷物半分をノア兄ちゃんが引き受ける事になった。

サクサクと色々な難題を解決していくノア兄ちゃん…。

ノア兄ちゃんこそ、無理してないのかな…。

心配になる…。



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