第24話 ノア兄ちゃんの動揺

「ノア兄ちゃん…。」


双眼鏡で、さっきまで私達が向かっていた方向を見ていたノア兄ちゃんが振り返る。


「あぁ、さくら…。…セイラムは?」


「しんどそう…。」


「……そうか…。とりあえず、点滴しとくか…。」


そう言って、テントの方へ向かう。


「ノア兄ちゃん、点滴も出来るの?」


「非常時の時だけな…。研修で受けたきりだけど…。」


「特殊警官て…、すごいね…。」


「皆が皆出来るわけでは、無いよ…。」


そう言って、セイラムの様子もを見る。

自分の荷物から医療用の鞄を出してきて、点滴セットを出してきて、手慣れた様子でセイラムの腕に点滴の針を刺していく。


「よし。これで後、オアシスの有無だな…。セイラムがあるって言ってたからあるんだろうけど…。セイラムが倒れた以上、このまま連れて行くにしても確信がないとなぁ。」


「あ、だから、双眼鏡で見てたんだ?」


「そう、そうなんだ…。ただ、双眼鏡ではまだ見えない距離みたいで…。」


「ノア兄ちゃん、オアシスの有無、多分、私わかるよ…。」


「えっ?何で?今まで、そんな事言ってなかったじゃん。」


「うん。今までは、出来なかったよ…。でもね…、儀式をすると私でも聞こえるようになるの…。植物の声…。」


「儀式…?植物の声…?」


何の事やら…、?マークいっぱいのノア兄ちゃんに、笑い掛ける。

そして、セイラムの枕元に座る。


「セイラム、ちょっとごめんね。」


そう言って私は、セイラムの唇に私の唇を乗せる。


「わ〜っ!!」


ノア兄ちゃんが、いきなり叫び出す。


「ど、どうしたの?」


どんな事があっても、冷静だったノア兄ちゃんが叫ぶとか…。

び、びっくりなんだけど…。


「ど、どどど、どうしたの、じゃねぇよっ!さくらっ!さ、さっきのはなんだ?」


めっちゃ取り乱してる…。


「え?……儀式だけど?」


「儀式って…」

「それより、ノア兄ちゃん。オアシス、ちゃんとあるよ。あっちから聞こえる。」


「それより…って、さくら…。」


力なく呟く。


「割としっかり聞こえるから、そう遠くないんじゃないかな…。」

「そうじゃないっ!さくらっ!」


急に大声を出して、名前を呼ばれる。

ビクッ。

ノア兄ちゃんにこんな叱られる感じで、名前を呼ばれたのは、初めてだ。

恐い…。


「さくら…。」


怯えている私を察知して、優しく両肩を掴む。


「駄目だ…。さくら。さくらは、宮のドームに居てわからないのかもしれないが…。」


私の目を見る。


「アレは、誰でも彼でもするべきでは無いんだ。」


「…そんなの、わかってる。誰にだってする訳ないじゃない!セイラムしか、そんな力無いんだからっ!」


「いや…。そういう事じゃ無いんだ…。」


「儀式だよ…。ノア兄ちゃん…。」


「儀式でも!…だ。」


私の目を見て、言い聞かせる。


「は…っ!まさか、あいつ…。儀式にかこつけて…。」


くうを睨みだす。


「…ノア…兄ちゃん…?」


何か、今日のノア兄ちゃん…。

変…。




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