第23話 セイラムの危機
月は沈み、陽は完全に昇った。
また、私達を照りつける。
暑い…。
それでも、随分進んだように思う。
「ちょっと、涼もう…。」
そう言って、ノア兄ちゃんがテントを立てる。
セイラムも扇風機と冷やしタオルを出す。
私は、水にビタミン、ミネラル粉末を溶かし込飲み水を作る。
何となく、それぞれの仕事が定着してきた。
「随分、北に進んできたかと思うが、まだ、コンパスは、使えないな…。まだまだ磁場の影響がある。」
そう、私達はドームから出てから、コンパスをまともに使えていない。
磁場がキツいようで、コンパスは真北を指さず、星と影の位置からしか方角がわからなかった。
「なかなかですね…。」
「次のオアシスでは、動物性タンパク質が捕れるといいんだが…。」
「捕れるとは?」
「狩るんだ。何か、動物いればいいんだけど。保存食も、栄養面でも限界あるしな…。セイラム、次のオアシスまで…。」
セイラムの方を見たノア兄ちゃんが凍りつく。
その表情を見て、慌てて私もセイラムを見る。
「セイラムッ!」
コップを持って座っていたセイラムが、表情を無くしたまま前へ倒れ込んだ。
「まずい…。」
そう一言漏らすと、手際良く遮熱シートを敷き、その上にセイラムを寝かす。
首のところ、目、指先、足先などをチェックしていく。
「ゔ〜ん。」
「ノア兄ちゃん…?」
「あっ、さくら。とりあえず、セイラムの脇、首の後ろに冷やしタオル置いてくれる?」
「わかった…。」
そう言うと、ノア兄ちゃんはその場を離れる。
私は言われた通りにしていく。
セイラム…。
私が腕を掴んでも、頭を持ち上げても、反応がない…。
苦しそうな表情のまま…。
こんな事になってしまうなんて…。
私が、守ならければならない立場なのに…。
その瞳を開けて…。
私を見て、いつものように笑い掛けて…。
「私を呼んで下さい…。」
ポトリとセイラムの顔に1粒の涙が落ちる。
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