第22話 スープの味
星と月明かりの元、砂漠に三つの影が映り込む。
砂を踏む音、布がすれる音、金属がすれる音
つまり、私たちが作る音しかしない。
静寂の世界。
セイラムには、植物の声が聞こえているのかもしれないけど。
あんなに暑かった砂も段々、熱が無くなってきてるのも、感じる。
先程までは涼しく感じてきたが、今となっては少し肌寒い…。
「そろそろ休憩がてら、食事にしよう。」
そう言って、ノア兄ちゃんが火を起こしてくれる。
「ノア兄ちゃん、今日は私が作るよ…。」
そう言って鍋やら、保存食やらを受け取る。
寒くなってきたし、暖まるものを作ろう。
昼間と深夜の気温差が、ほんと激しい…。
「セイラム…、次のオアシスまでどれくらいありそうだ?」
「…そうだな…。声が聞こえるから、あるのは間違いない…。始めは、出発して1回目からのオアシスより遠い感じだったけど、けっこう近付いては、来てる。」
「そっか…。昼前にはオアシスに着きたいが、行けそうか?」
「…あぁ…。それなら、大丈夫だと思う。」
「出来たよ〜。」
そう言って、3つの容器に入れてそれぞれに渡していく。
「うん!上手いっ!」
ノア兄ちゃんが1口食べてすぐコメントしてくれる。
「へへ~。ありがとう〜。」
「料理、出来たんだな…。」
「簡単なものなら…。」
と、ノア兄ちゃんに笑い掛ける。
「何、謙遜してんだよ。この間、俺にパン作ってきてくれたじゃん。あれも美味かった…。」
セイラムが、何故か私の料理出来るアピールをしてくる。
「そ、そんな事言わなくても…。あの時は、材料も調理器も色々揃ってたし…。」
「そうか…。さくらのパンか…。食べてみたいな…。」
ノア兄ちゃんの笑顔がまともに見れない。
そんな、大した料理出来ないのに、恥ずかしい…。
「また、機会があれば…。」
「うん。楽しみにしてる…。」
「さぁ、そろそろ再出発しようか…。」
「はい。」
「あぁ…。」
私達は、再び北北星を目指して歩き始める。
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