第20話 ノア兄ちゃんの想い
私の体調を考え、今日は1日、このオアシスで休む事になった。
「暗くなる前に、水浴びしておくか…。さくら、先、行っておいで…。」
ノア兄ちゃんが進めてくれたので、とりあえず、体を洗う事にする。
言われた所に行ってみると、池に目の細かい網で囲いをしてくれている。
至れり尽くせりの状態…。
ノア兄ちゃん…、ありがとう…。
そう思いながら、体を洗い終え、布を張ってる所に向かう。
「あっ、おかえり!」
ノア兄ちゃんが、私を見つけて笑い掛ける。
「ノア兄ちゃん、何から何までありがとう…。」
「いやいや…、良いって…。あっ、セイラム、お前も、行っておいで…。」
「そうだよ。セイラムさ…。セイラム。ノア兄ちゃん、危険の無いように色々してくれてるよ…。」
「あ?あぁ…。」
ボーッとした感じで、池へ向かう。
だ、大丈夫かしら…。
セイラムの背中を見送る。
「ほら、さくら。髪拭こう…。体調崩す原因になるよ…。」
手にタオルを持ったノア兄ちゃんが、私の頭を拭き始める。
「あっ、何か懐かしい~。子供の頃に戻ったみたい〜。」
「そうだな…。さ、座って…。」
近くにあった折りたたみ式の椅子に座る。
引き続き、私の髪を拭いてくれる。
「大きくなったな…。さくら…。」
「ノア兄ちゃんも!大きくなったし、逞しくなった!始め、わからなかったよ!」
そう言って私の後ろで髪を拭いてくれているノア兄ちゃんを振り返って見る。
「はいはい…。わかったから、前向いて~。」
そう言いながら、私の顔をまえに向ける。
「綺麗になったな…。」
「え…?」
ノア兄ちゃんの声が小さくて聞き取れなかった。
「俺さ、こう見えて、俺の住んでた所の超エリート特殊警官の隊長やってたんだ。何故だか分かるか?」
「……、わかんないけど、ノア兄ちゃん、凄いね!」
「さくらの行方を調べる為だ。星の中枢に居れば、分かると思ったんだ。……。でも、いくら調べても、わからなかった…。心配で仕方なかった…。」
「……。」
「まさか、宮のドームから出てなかったとはな…。」
「……。」
「結果的に会えて良かった…。」
そう言って、後ろから私の肩を抱く。
「ノア兄ちゃん…?」
ノア兄ちゃんの額が私の左肩に置かれる。
ノア兄ちゃん…。
私をずっと捜してくれてたんだ…。
そっと、前に回されたノア兄ちゃんの腕に触れようとした時…。
「貴様っ!さくらに何をっ!!」
セイラムが、ノア兄ちゃんの胸倉を掴んだ。
「…はいはい。何もしてないですよ…。」
慌てる様子もなく、胸倉を掴んでいるセイラムの手首を掴み、一気にねじながら、セイラムの背中の方に持って行く。
「痛、痛ててて…。」
セイラムの悲鳴が合図だったかのように、ノア兄ちゃんは、すぐ手を離した。
「じゃ…。俺…、体洗ってくるわ…。」
そう言って、立ち去っていった…。
「「……。」」
しばしの沈黙の後、
「無敵だね…。」
と一言もらした私に、
「…うん…。」
小さい声で、同意の声が聞こえる。
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