第19話 静かなる戦い

「お待たせしました…。」


テントの外にも、あの昼間に使われていたでっかい傘が使われていた。

ノア兄ちゃんもセイラム様もカッターシャツ1枚とズボンという、ラフな格好になっていた。

2人共シャツの前は全開で、見えてしまう…。

恥ずかしい…。

さすがの私は、ボタン2つ分くらいで、全開は出来ない。


「さくら…、スープなら、食べられるだろう?塩分強めにしてあるよ…。」


「あ、ありがと…。」


ノア兄ちゃんから、スープが入った器を受け取る。

早速、口に含む。


「おいし…、おいしいよ。ノア兄ちゃん!」


「そうか…。良かった!」


そう言って、しゃがんで私の目線に合わせ、ニッコリ笑う。

その瞬間、ノア兄ちゃんの目が見開かれる。


「…?どうしたの?ノア兄ちゃん…。」


「…え…っ。あ、あぁ…。何でもないよ…。」


そう言って、私の頭を撫でる。


「しっかり、水分、栄養、休養を摂ろう…。」


ポンポンと私の肩を軽く叩き、ノア兄ちゃんは立ち上がり、セイラム様の方を見る。


「セイラム、ちょっと…。」


いつもより低い声でセイラム様を呼び出し、どこかへ行ってしまう。

2人の姿は、全く見えなくなってしまった。

私の座ってるところからでは、所々に生えている草や木とさっきまで居たテントしか見えない。

どこまで行ったんだろう。


「セイラム様…。」


ふと不安になって、小さく呼んでみる。

……。

何も反応は無い…。


「ノア兄ちゃん…?」


さっきより大きめの声で呼ぶ。

……。

それでも、反応は無い…。

不安に駆られる。


「セイラムッ!」


大きい声で叫ぶ。


「どうした?さくら…。」


セイラム様とノア兄ちゃんが顔を出す。


「泣いてるじゃあないか…。」


私の顔を見て、セイラム様は指で涙を拭う。


「……。二人が…、二人が居なくなったのかと思った…。」


ポロポロと目から涙が溢れ出す。


「さくら…」


そう言って、私を抱きしめようとするのを阻止するようにノア兄ちゃんが


「大丈夫だよ…。」


そう言って、私の頭を撫でてくれる。

セイラム様は、自分の行動を制限されてムスッとしている。


「二人とも、何処に行ってたの?」


「う?…あ…、あぁ…。今後の予定を話し合ってただけだよ…。」


ノア兄ちゃんはニッコリする。

セイラム様は、まだムスッとしてる。


「セイラム様…?」


ハッとした感じでこちらを見る。


「さくらっ!セイラムッ!」


一言ののち、またプイッと横を向く。


「あ…っ。すみません…。」


???

何か、機嫌悪い?


「あっ、気にしなくていいよ。さくら…。俺がちょっと、セイラムに注意しただけだから…。」


ニッコリと笑う。


「さぁさぁ。食事の続きしよう…。」


そう言って、三人で食事を摂り始める。

チラリと、セイラム様とノア兄ちゃんを見る。

一見、普通に並んで食事しているように見えるけど、明らかに二人の間に分厚い壁があるように思えた。


何があった?


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