第16話 出発

「まずい。夜が空けてくるな…。」


ノア兄ちゃんが空の様子を見て呟く。


「夜が空けてくるとまずいの?」


「あぁ…。ここは、砂漠。昼間になると高温になる。昼頃には、少しでも涼しい所で待機する方がいいんだ。涼しくなったら、また移動ってな感じが望ましいんだが。」


「そうなんだ…。」


「セイラム、目的地ってのはどの辺なんだ?遠いのか?」


「……、わからない…。」


え…。


「わからないってどういう事なんだ?目的地は男が知ってるって、あの女言ってたぞ!」


「行く方向ならわかる。カミラが言う目的地が遠いのか、近いのか、どんな所なのかは、伝えられていない。」


「何それ…。」


「さ、さくら?」


ノア兄ちゃんがびっくりした表情になる。


「あんなに、人の幸せを願ったセイラム様が、こ、こんな仕打ちを受けるなんて!!」


悔しい…。


両手拳に力が入る。


「ま、落ち着けってさくら…。それで、セイラム。あの女からは、なんて聞いてるんだ?」


「あぁ。北に…。北北星を目指せって。」


「北北星っていうと、この星の真北を表す方角か…。」


「他には?」


「特に無い…。」


「そ、そうか…。そしたら、北方面に進み、とりあえず、オアシスを探すしかないな。」


「北北星は、どれかわかるのか?」


だんだん紅みが帯びてきた空を見上げたノア兄ちゃんが問う。


「あぁ…。そこは、カミラに叩き込まれた。…、あれだ…。」


星が、随分見にくくなった空を見上げて指差す。


「よし!じゃあそっち方面でオアシス探しながら、出発しよう。ただそのオアシスを探すのが厄介なんだけど…。」


と、悩むノア兄ちゃん。


「それは、大丈夫。心配ないよ。ノア兄ちゃん。」


そう言って、セイラム様と顔を見合わせる。


「え?どういう事?」


よくわからない感じのノア兄ちゃん。


「まぁ、静かに見てて…。」


セイラム様が瞳を閉じて、集中する。


「「……。」」


黙って見守る。


しばらくすると、セイラム様は瞳をあける。


「うん…。大丈夫…。この北の方向に少し遠いかもしれないけれど、オアシスは、あるよ。」


だんだん明るくなってきて、辺りが砂漠しかない事がわかってくる。


「どうしてわかるんだ?」


ノア兄ちゃんは、不思議そう…。


「元神官だからな…。」


ノア兄ちゃんに、ドヤ顔でニッコリとする。

!!

トクン…。

私の何処かで鳴ったような気がした。

顔が熱くなったような気がして、下を向く。


「じゃ、出発しよっか…。」


荷物まとめて、立ち上がったノア兄ちゃんが言う。


「うん。」

「あぁ…。」


見えづらくなった北北星を目印に私達は、歩き出した。

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