第12話 番外編 セイラムの苦悩 ①

「お疲れ様でした。セイラ様。」


俺の従者、兼、好きな人のさくらがいつものように微笑む。


「はぁぁ、ほんと、疲れた~。」


神歌を唄うとほんとに疲れる。

疲れ過ぎて、普段俺自身の底に押し殺しているものが湧き出てきそうになる。

それを抑えるのにも、必死だ…。


「ご飯、食べて下さいね~。」


この10年、さくらは俺に対する態度は何も変わらない。

今日も、俺の目の前をチョロチョロと動く。

俺の前でどんどん綺麗になっていく、さくら…。

見る度、苦しい…。

はぁぁ、ご飯じゃなく、さくらを食べてしまいたい…。

ゴクリと喉が動く。

手を伸ばせば届く。

……。

…我慢…。

我慢せねば…。

……。

でもさ、なんか…。

俺だけこんな苦しいの、何か腑に落ちない。

さくらもちょっとは困ればいい…。


「食べさせて…。」


「……。」


こいつ、無視しやがった…。


「スプーンが重くて、持てないよぉ〜。さくらぁ…。」


もう一押ししてやる。


「疲れたよぉ~。」


「わかりました。これ食べたら湯殿に行って来てくださいね。」


と言って、俺の斜め横の椅子に座ってくれる。

ふふふっ…。

勝った…。


「あっ、ちゃんとフーフーしてね。」


これで、さくらを1人締めできる。



さっきは、ヤバかった…。

湯船に浸かり、先程の食事の事を思い出す。

俺の作戦勝ちで食べさせて貰う事になったのは、良かったものの…。

フーフーしてくれるさくらの唇…。

めっちゃ柔らかそうだった…。

そのスープより、あんたがおいしそうですからっ!!

何回、思った事か…。

全然、警戒心ない…。

俺が女って思ってるからだろうけど、ちょっと警戒心無さすぎじゃないか…?

不安だ…。



「あ〜、さっぱりした〜。」


と風呂場でさっぱりさせてきた。


「よかったですね…。」


そう言っていつもの様に、髪を拭いてくれる。

この時間、俺の至福の時!

俺の髪長いから、さくらがずっと確実に俺の傍に居てくれる時間。

さくらの顔が見たくなり、首をぐっと反らして後ろにいるさくらの顔を見る。

髪が乾かせないというさくらの顔が可愛いすぎた。

ガタン!

気付いたら、さくらを床に押し倒していた…。

こう…、ならない為に、お風呂でさっぱりしてきたはずなのに…。

さくらの瞳を見る。

めちゃくちゃ、驚いている。

あぁぁぁっ!

キスしたいっ!

っていうか、…もう!…してやるっ!

後、1mmで目的地到達というところで、


「今度は、何を読まれたんですか?」


さくらの声が聞こえた。


はっ!

とする。

あ、あ、あ、危なかった~っ!!!

とまず思ったが、よくよく考えると…、

面白くなぁいっ!!×100

ちょっと不機嫌になりながら、椅子に座り直す。

さくらは、ドライヤーで俺の髪を乾かし始める。

会話がいつもの様に、弾んでいく。

その流れで植物の声の話が出る。

!!!

これは、チャンス!


「植物の声、聞きたい?」


まじ、神チャンス!


「え…、そりゃぁ…、」


やったぁ!!!

えっと…、いつぶり?

12才の時以来か?

12の時に植物の声を聞かせるのにキスしたぶり…。

4年ぶり…。

自分の中で、超盛り上がる。

俺のセリフに対して、さくらが何か言ってるけど、何も聞こえない。

やっぱ壁ドン…。

壁ドンでいくかぁ…。


「わかりました!私が壁ドン、して差し上げますっ!」


いきなり、そんなさくらのセリフが入ってきた。


「え…。」


何言った?

さくらが壁ドンする為に、色々俺に指示する。

踏み台を持ってきて、目線を合わせるさくら…。

め……っちゃかわいい……。

俺…、我慢出来るかな…。

じろじろ俺を見て来て、ボッと顔が赤くなるのがわかった。

その瞬間、俺の何かが外れた。

さくらを強引に引き寄せ、壁際にやる。

混乱してるさくらを見て、ますます抑えられなくなる。

片方の紙紐を解く。

ストンとさくらの綺麗な髪が腰のところまで落ちる。

綺麗だ…。

たまらず、もう片方も解く。

はぁぁ、もう、無理…。

気付いた時には、さくらの唇にむしゃぶりついていた。

さくらの小さな唇を俺の唇で覆う。


「う…。」


この唇だけでなく、全部俺のものにしたい。


「あ…。」


さくらのもらす吐息が、より夢中にさせる。

舌は、入れないようにしよう…。

ラスト1本になった俺の理性が言う。


「はぁ…。」


これ以上は、ラスト1本になってしまった理性の所在もあやしくなる。


さくらから離れる。


その瞬間、さくらが気を失う。


「さくらっ!!」


倒れ込むさくらを支える為、手を伸ばした。



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