第11話 自由

「さくら…。」


ランプを持ったセイラ様だった。

ホッとしてセイラ様に抱きつく。


「何故、私を置いてこうとしたんですか?ひどいです。」


「ごめん。危険だと思って…。」


私を抱き締める。


「でも、一緒に来てくれて、嬉しい…。夢…みたい…。」


「セイラ様…。」


セイラ様は私から離れ、ランプを下に置く。


「やっと、俺は、自由になれる。」


そう言うと、腰から短剣を取り出し、自分の髪をざっくり切った。


ギャァァァ!!

心の中で叫ぶ!


「な、な、な、何してるんですかっ!」


足首まであったセイラ様の髪が、髪が…。

横は頬の辺りまで、後ろは首のところまでになってしまった…。

私が10年間慈しみ育ててきた、セイラ様の髪が…。

ショックで四つん這いになる。


ふらりと立ち上がる。


「ひ、ひどいです…。セイラ様…。」


「あっ、さくら!俺、セイラじゃないから。俺、ほんとは、セイラム…。」


「へ?」


仰る意味がわかりません…。

何か、さっきから、俺、俺って言ってるし…。

もし、男だったら…。ごっこでもしてるのだろうか…。

セイラ様の足元に打ち捨てられている髪の毛を見る。

覆水盆に…返ってくれ…。


「はぁぁ、やっと思いっきり、さくら触れる~。」


そう言ってバックハグをしてくる。


「え?…ちょ、ちょ…、セイラ様?」


首筋に舌を当ててきた。


「…や…。」


そのまま私の首をなぞる。


「ひゃ…。」


体がバネのように跳ね、力が抜ける。

その場で倒れそうになる私を抱えながら、セイラ様も倒れ込む。

セイラ様は、私に覆いかぶさる。

顔が近づいて来る。

どうしよ…。

どうしたらいいの…。

セイラ様、一体どうしたの…。

固く目をつぶる。


「はいは~い。そこまでね〜。」


そう言う声が聞こえて、体が軽くなる。


!!

何が起こったの?

恐る恐る身を起こしながら、目を開ける。


!!

「セイラ様っ!!」


セイラ様が少し離れたところで、尻もちをつき、腰をさすっているところだった。


「大丈夫ですか?」


慌てて、セイラ様のところに駆け寄る。


「あぁ。誰かに後ろから飛ばされた…。」


「誰かって、誰もいるはずないじゃないですか…。まさか、獣?」


「セイラ様…。下がっていて下さい。」


とりあえず、セイラ様を背中に隠すように前に出て、腰から短剣を取り出し、構える。


「さくら…、俺、大丈夫だから…。」


私の前に出ようとする。


「危険です。セイラ様!何の為の私ですか!」


「だから、俺はセイラムで男。さくらに守って貰わなくても大丈夫!」


そう言ってがっつり両手で私の顎を持つと、

勢いそのまま唇と唇がぶつかる。

え…。


「わかった?」


唇を離し、私の顔を見る。

……。

コクリ。

とりあえず、頷く。

……。

でも、やっぱりわからない…。

セイラ様が男?

こんなに、綺麗のに?

……。

無い無い…。

絶対に無いっ!

……。

遠くの方で植物の声が聞こえ出す。

セイラ様とキスをすれば聞こえるのだ。


「はい、は〜い。もういいですか?そろそろ自己紹介させてもらっても…。」


私とセイラ様以外の声が聞こえる。


「誰?」


その人は、ランプの明かりが届く範囲まで歩いて来た。


「ノア兄ちゃんっ!」

「さくらっ!」


2つの声が、夜の砂漠に響く。


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