第7話 救世主
「はい、ウリくん、人参さんだよ~。」
と言いながらウリくんの口の中に入れる。
はむはむ。
小さいお口で一生懸命食べている。
「さくらお姉ちゃん~。」
カナデちゃんの声がきこる。
嫌な予感しかない…。
「どうしたの?カナデちゃん。」
今度は、ウリくんに大根…。
「あのね〜。ミオリちゃんがいないの…。」
「!!!」
さらりと恐ろしい事を言った。
慌てて立ち上がり、捜しに行こうと一歩踏み出した時、
「さくらさん、大丈夫…。私行くから…。」
私と同じ亜麻色の髪がサッと私の隣を通り抜ける。
この髪は…、
「カリンちゃん!」
カリンちゃんは振り返らず、手だけ振ってミオリちゃんを捜しに行く。
助かった~。
椅子に座り、ウリくんの離乳食の続きをあげる。
一段落して、部屋の片隅でカリンちゃんと遅めのお昼ご飯を食べる。
ウリくんもカリンちゃんもお昼寝中…。
カナデちゃんとソフィアちゃんは、二人でコソコソおしゃべりしてる。
子供達の所在確認しながらご飯を食べる。
「カリンちゃん、ここに来てよかったの?」
「セイラ様が、昼前後は孤児院の手伝い行って来てっておっしゃってね…。急に、どうしたんだろ…。」
「そ、そだね…。」
セイラ様に孤児院の内情を話したとは言えない。
セイラ様、私の事心配してくれたのだろうか…。
「私がいつもこっちが気になって、イライラしてたのが原因なのかな…。」
「ど、どうだろね…。でも、今までずっとカリンちゃんやって来たんでしょ?すごいね…。私なんかまだまだだよ…。」
「違う、違う。私の時は、カミラ先生もがっつり保育室に居てくれたから、もっと余裕あったの。今、カミラ先生も保育室離れてる事多いでしょ?」
「確かに、居てない事の方が多いかな。」
「カミラ先生の事だから、何かしてるんだろうけど…。さくらさん一人は、キツいよ。」
「そっか…、カミラ先生が…。」
「あなたにセイラさんを任せられない」宣言を思い出す。
とりあえず1ヶ月って話だけど、ちゃんと1ヶ月後戻れるのだろうか…。
「あっ、そうそう。はい、これ!セイラ様から…。」
手のひらより少し小さめの小物を渡してきた。
……。
これは…。
セイラ様が使ってた薔薇の香りのヘアクリーム。
カリンちゃんの顔を見る。
「なんか、使いかけだけど、さくらにあげてって言われたよ。もう、使わないから…って…。」
そっと蓋をあけ、少しすくい自分の髪に少しだけ馴染ませる。
あ…。
セイラ様の香りがする…。
「こっちの方が上等品なのに、何で変えたかな~。」
クリームを髪に馴染ませている私を見ながら、カリンちゃんが言ってきた。
更に続けて、
「急に、金木犀の香りのヘアクリームが良いって言い出して…。めっちゃ探すの大変だった。こっちのは、質落ちますよって言ってもこれがいいの一点張りだったし…。」
「セイラ様、ヘアクリーム、変えたんですね…。」
とりあえず、知らないふりをする。
「寂しい」と言って後から抱き締められた時の事を思い出す。
「今日は、ありがと」と言って一瞬だけ見せてくれたセイラ様の辛そうな顔…。
胸が締め付けられる。
早く、セイラ様のところに戻りたい…。
「さくらさんと、セイラ様って…」
「え…っ。」
「ううん。何でもない。それより、そろそろ、チビ2人起き出しそう…。」
「あっ、ほんとだ。」
私達は慌てて、食器を片付け子供達のところへ向かう。
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