第5話 成長…?
ちゃぷん…。
湯船に浸かる。
ここは、宮のドーム内の神官以外の人が使える大浴場。
孤児院に来てから1日1日があっという間に終わる。
おかげで、セイラ様のところに行けない寂しさは少しは和らぐが…。
セイラ様…、元気にしてるだろうか…。
ちゃぷん…。
誰かが入って来た。
私と同じ髪の色…。
あっ。
「カリンちゃん?」
呼び掛けられて、相手も気付く。
「さくらさん?」
「「お疲れ様です。」」
お互い、頭を下げる。
「孤児院では…」
「セイラ様は…」
2人同じタイミングでハモる。
見合わてお互い笑い合う。
「孤児院は、カナデちゃんがいた頃と変わりなく忙しいよ。あっ、ウリくん、この前、初めて立っちしたよ~。」
「えっ!そうなんですか?わぁ、見たかったなぁ…。赤ちゃんの成長は早いですねぇ。」
「そうだね〜。」
「「……。」」
「セイラ様は?」
たまらず聞く…。
「セイラ様…。あまり、おしゃべりする方では、ないんですね…。こちらから話し掛けても、「はい」とか「お願いします」とかしか返ってこないし…。」
「え…。」
「あっ、よく懐から、何か出してはよくそれを口元に持っていってますけど…。あれ、何かのお守りですか?」
「え…。」
そんなの、私、知らない…。
「朝もお伺いした時には、既に身支度終わってるぐらいだし。入浴後もあの長い髪、自分で乾かすんですよ!私の意味ある?って感じですっ!!」
……。
な、なんか…、私の時と全然違うんですけど…。
「そ、そうなんだぁ…。」
「さくらさんの時、どんな感じでした?っていうか、空き時間、何してました?ほとんど、セイラ様自身でしてしまわれるので、私の仕事あんまり無いんですよね…。無いなら無いで、そっちに行きたいんですけど…。結構、今、子供多いから、さくらさん、キツイでしょう?」
「え…っ、あ…、うん。」
セイラ様~。どうなってるの〜。
私、サボってたみたいになってますけど…。
しくしく…。
心の中で泣く。
「お食事の方は、きちんと食べてますか?好き嫌いが多くて…」
「あっ、食事はあまり、摂れてない感じですね…。」
私のセリフを最期まで聞かず、重ねてくる。
「嫌いなものは…」
「まさか、1才児でもないのに食べさせるわけにもいかず、当の本人も「下げてくれ」の一点張りだし…ねぇ…?」
私に同意を求めてくる。
いつも、疲れている時、嫌いなものを食べる時「食べさせて×2」とせがまれ、食べさせていたとは、とても言えない状況…。
凍りついた笑みでしか返せない…。
セイラ様…。どうなってんのぉ…。
っていうか、今までが変だったのか…。
*
セイラ様…。
お食事、あまり食べられてないのか…。
神歌の日まで、まだ日にちはあるけど、心配は心配よね…。
カリンちゃんと別れ、自室に戻り、金木犀の香りヘアクリームを塗りながら思う。
明日、孤児院の仕事終わってから、パンでも焼いてこっそり様子見に行こう。
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