第4話 追想
「さくらお姉ちゃん~。ウリくんが泣いてる〜。」
「え〜…。そうなの…?」
1才のミオリちゃんを食べさせてると4才のカナデちゃんが報告してくれる。
わ〜どうしよう…。ミオリちゃん食べさせなきゃだし…。
ウリくんも気になるし…。
「え〜と…。ウリくんは何故泣いてるかわかるかなぁ…。」
言いながら、ミオリちゃんに人参をパクリ。
「う〜んとね…。わかんない…。でも、くさくはないよ〜。」
う〜ん。
なるほど!でかしたカナデちゃん!
臭くはないってことは、オムツではない…。
離乳食もミルクもさっき上げたし…。
「ありがとう〜。カナデちゃん…。」
ミオリちゃん、じゃがいもパクリ…。
ウリくんは、機嫌が悪いのかな…。
……。
とりあえず、抱っこかなぁ…。
「さくらお姉ちゃん、私に任せて…。」
颯爽と私の横を通り、ウリくんのところに行ってくれる。
皮膚の色が黒い7才の女の子。皆と同じ白い衣装でもダントツに、似合っててとってもかわいい子。
ウリくんの隣に座ったかと思うと歌い出す。
「あ〜…」
一声で4つの音を出す…。
それを聞いたウリくんは、泣くのを止めてすやすや眠り始めた…。
やっとミオリちゃんの食事も終わり、ウリくんをあやしてくれた女の子の隣へ行く。
「ありがとう〜。ソフィアちゃん。疲れたでしょ…。それとも、何か食べる?」
「…う…ん…。」
眠そうに目を擦る。
「眠たいんだね…。私の膝で寝ていいよ。」
と言って、膝をたたく。
「うん…。」
素直に私の膝に頭を置いて寝始める。
一声で4つの音をだしながら、歌うのはものすごく体力を使う。だから歌った後は、ものすごく疲れる。疲れ過ぎて、理性とか吹っ飛んで、食欲とか睡眠欲とかそういう生存欲が表に出てくる時がある。
だから歌った後は、必ず休養を取らなければならないし、頻繁に歌うものでもない。
すやすや寝ているソフィアちゃんの頭を、優しく撫でる。
この子が、次期神官候補といったところだろう。
そうなると、従者は…。
「さくらお姉ちゃん、変わるよ…。」
顔を上げると、タオルケットと枕を持ったカナデちゃんが立っていた。
「そお?ありがとう…。」
そろっと膝を抜き、代わりにマクラを敷く。
カナデちゃんは、タオルケットをかけて、ちょこんと寝ている隣に座る。
「じゃ…。お願いね…。」
そっと離れ、2人を見守る。
従者は、カナデちゃんになるのかな…。
もしかしたら、急に私みたいに6才で入って来て、半年で従者ってパターンもあるかもしれない。
そういえば、セイラ様って何才から神官してたんだろう。
私が従者になった時には既に何年間かしている感じだった。
*
「カミラ!その子は誰?」
小さい頃のセイラ様だ…。
「セイラさん、カミラ先生でしょ?」
「カミラ先生、その子は誰ですか?」
「はい、よく出来ました。」
カミラ先生は、頭を撫でる。
「この子はね…。昨日、孤児院にやって来た子。さくらさんよ。」
そう言って、カミラ先生のスカートにしがみついていた私をセイラ様の前に突き出す。
「セイラさんと同じ6才よ…。」
「さくらさん、こちら神官のセイラさん。あなたはセイラ様と呼びましょうね。」
「へぇ…。6才にもなって泣いてるんだ…。」
私の顔を覗き込む…。
すんすん鼻を鳴らしながら、フイッと横を向く。
5才の時地球から離れる時大泣きして、1年かけて宇宙船での生活に慣れて、慣れた頃、宇宙船で一緒に過ごしたお兄ちゃん、お姉ちゃんとの別れ…の大泣き。
誰も、私のそばにいてくれない…。
また、目に涙が溜まってくる。
「よく泣く子だね…。さくら…。行こ!宮の森、案内してあげる。」
私の手を引いて宮の外に出て、どんどん植物生い茂る中に入って行く。
怖い…。
立ち止まって、セイラ様の手を引っ張る形になる。
「大丈夫。見て…。」
足元を指差す。
セイラ様の足元を見るとそこだけが草がペタンと寝ている。
葉でセイラ様の足を切らないように、伏せているように見える。
「植物達は、私の味方だよ…。絶対傷つけるような事しないし、迷っても宮までの道広げてくれるよ…。だから、大丈夫。」
「植物達…?味方…?」
「うん!だから、行こっ!」
「……。」
黙って頷く。
「ほら、着いたよ…。」
「…わぁ…。」
目の前には、高くそびえ立つ岩場から勢いよく落ちる水。その滝を包み込むように覆う緑緑しい植物軍…。
滝の下の方には、虹が見える。
「きれいだね…。」
セイラ様に笑いかける。
私の笑顔を見て、
「やっと笑った!」
満面の笑みで私を迎えてくれる。
黒く長く艶やかな髪に、藍色の潤んだ瞳…。
何てかわいい子なんだろう…。
「さくらの髪、きれいな色だね。」
私の亜麻色の髪を触る。
「セイラ様の方がきれいだよ!」
自然と言葉が出る。
「ううん。さくらの方がきれい…。」
触っていた私の髪をサラサラと落ちるように離す。
「さくら!私の従者になってよ!」
「じゅ…しゃ…?」
「うん!そしたら、ずっと一緒にいられるよ!」
そう、セイラ様に言われてどんなに嬉しかった事か…。
ソフィアちゃんとカナデちゃんを見て思い出した。
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