第四話 音羽家集合
僕は今、花音さんと夕食を作っていた。当然「僕だけで良い。」って言ったんだけど「お姉ちゃんだから!」って聞かなかったんだよね。たしかに僕早生まれだから一応年下なんだけど。ちなみに花音さんは五月生まれらしいです。
「人参切り終わった?」
「はい。」
「じゃあそこ置いて次これお願い。」
最初は不安だったけど普通に料理ができる花音さん。定番中の定番カレー作りとはいえタンタンタンっと軽やかな音を立てながら、慣れた手つきで野菜を切っていく。
ちょうどできた時
「「ただいまー。」」
お二人が帰ってきた。
「おかえりー。」「おかえりなさい。」
それを受けて盛り付けていく僕ら。それを見た社長は
「おお。仲良くしているね。よかったよかった。」
うんうんとご機嫌に頷く。それに「あらあら〜。」と頬に手を当てる秘書さん。
「自己紹介が遅れました。花音の母の音羽 静香(おとわ しずか)です。これからよろしくね。咲斗君。」
「はい。よろしくお願いします。」
お話もそこそこに僕らは食卓についた。
カチッ。プシュー。
気持ちのいい音を立てる缶ビール。社長はそれをごくごくと喉へと流し込む。
「ぷはー。いやーそれにしても咲斗君が受け入れてくれて助かったよ。いつもいつも花音が寂しそうだったからね。」
「ちょっとお父さん!?」
スプーン片手に赤面する花音さんが抗議の声をあげる。しかし社長は上機嫌に続けた。
「小さい頃から帰りが遅くなりがちだったからね。私としては花音の笑顔が増えて満足だよ。」
「いつも私こんな感じなんですけどー。」
「ああそうだね。でも昨日までは『仕事だから仕方がない』って言う陰りが見えていたよ。今は気の合う家族がいて嬉しそうじゃないか。」
「・・・。」
ますます顔を赤面させ俯く花音さん。えーっと要するに家でずっと一人な花音さんの遊び相手兼学校でのお目付役として雇われたと。本当に娘さんが可愛いんだなぁ。
「あなた、このままだと花音が潰れちゃいますよ。」
さらに続けようとする社長を静香さんが笑い混じりに嗜める。
「おおっと。そうか。まぁそう言うわけだからよろしく頼むよ、咲斗君。」
「はい。社長。」
そう締め括る社長だったが途端に渋面。
「社長というのはやめてくれ。ここは家なんだから。君も名前で呼んでくれ。」
「えっ。いや。」
「君のことだ。私が君の雇い主だからそう呼んでいるのだろう?なら雇い主として命ずる。名前で呼んでくれ。そしてこれはどうせ花音からも言われているだろうが———家族のように接してくれ。頼む。」
社長からの嘆願。これから三年間ここで過ごすことになりそうだしそもそもとして僕に断るという選択肢はない。
「分かりました。宗一さん。」
「固いな。まあ少しずつ慣れていけばいいか。それじゃあ冷めないうちに食べるとしよう。」
今日の出来事を和気藹々と話す僕ら。笑い声が絶えない一つの家族。いつかそうなれたらな。そう願う僕。楽しい団欒の食事は深夜まで夜を明るく照らすのだった。
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あとがき
今回短いですね。琴葉刹那です。家族四人の顔合わせが目的なのでこうなりました。次回は二人のショッピング。正確には制服を買いに行こう、です。それではまた次回。ばいばーい。
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