第三話 求める役割

「はい。ここが食堂ね。」


 僕は花音さんに屋敷の案内をされていた。今は二回の食堂だ。

 なんでも一階は接待スペース、二階は家族共同、三階個人部屋、となっているらしい。かつては分家の面々も住んでいたらしいのだが今はもう独立しており空き部屋が多いのだそう。


「それで隣が台所であとは親戚が来た時用に大広間があるけど普段使わないから気にしないで。」


 そう的確簡潔に説明していく花音さん。そんな彼女に、僕はとある疑問をぶつけることにした。


「あの、一つ質問をいいでしょうか?」


「何?」


「・・・こんなに大きい家なのにお手伝いさんとか見当たらないんですけど・・・。」


 そう。かれこれ一、二階を見て回ったが使用人さんがいないのだ。果たしてこれは


「ああ。よく聞かれるけどうちは使用人雇ってないんだよね〜。だから『常に綺麗に』がモットーです。」


 なんと。これまたお金持ちのイメージが崩れたなぁ。この家大きいしずっといると思ってた。でもなんでだろう?


「今『なんで使用人雇わないの?』って思ったでしょ?」


「えっ、ええはい。」


「ふふ。亡くなったひいお祖父ちゃんがね。『もう皇族でも華族でもないんだから慎ましく身の丈にあった生活をしなさい』って言ったらしいの。だから屋敷とか資産は受け継いだけど使用人は雇わないようにしているの。時々庭の手入れに庭師さんを呼んだり車の整備に整備士さんを招いたりはするけどね。」


 悪戯が成功した子供のように無邪気に笑う花音さん。そんな彼女に思わず見惚れてしまうがぶんぶんと顔を振ると僕はもう一つ聞いてみることにした。


「もう一つ質問、良いですか?」


「うん。良いよ〜。」


「僕執事・・・一応使用人として雇われたんですけどこれって・・・?」


 僕だけ何故?

 あの人は大企業『音羽』の社長だ。どうもあれだけが理由とは思えない。しかも話を聞く限り特例のようだ。本当になんで?


「あ〜。・・・私ね。最初『新しく家族になる子に会いに行ってくる。』って言われたんだよね。で、貴方と一緒にお父さんが帰ってきた時、お父さんから今度は『花音の執事にすることになったからよろしく!』って言われて。君、どう言う経緯でここに来たの?」


 僕はここに来ることになった経緯を説明する。

 親の夜逃げ、借金の存在、社長からの頼みなどなど。頼みについて聞いた花音さんは納得がいった様子だった。


「なるほど。・・・災難だったね。でももう大丈夫。私たちは見捨てないから。」


 僕の頭を優しく撫で、温かい声で言う花音さん。そんな中、少し涙ぐみそうになる僕がいた。そんな僕の頭をもう一度撫でると花音さんは嘆息する。


「貴方を雇った理由はたぶん額面通り受け取って大丈夫だよ。あの人、家族のことになると裏表ないし良くも悪くも直球だから。」


 花音さんは続ける。


「私が貴方に求める役割はただ一つ。家族!弟!以上。って言うことでそう固くならずに家族みたいに接してくれたら嬉しいな。」


 ———あっ。もちろん対外的には執事としても振る舞ってもらうよ。


 屈託ない笑顔でそう告げる花音さん。それに僕は改めてこう答える。


「よろしくお願いしま——」「家族だよー。」


「よろしく。花音さん。」


「うーん。まだ固いなぁ。———こちらこそよろしくね。咲斗君♪」


 家族としての挨拶を口にしながら僕らは三階へと上がって行くのであった。


————————————————————

あとがき

この投稿ペース久しぶりですね。琴葉刹那です。やはり夏休みはこうでなくては!(たぶん明日には落ちる。)予想と違ってこっちでした。次どれ書こうかな。部活のないこの一週間の間に「演劇」進めようかな。まぁそれらはその時の気分次第。それではまた次回お会いしましょう。ばいばーい。




 

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