第27話 待ち人は来ず。

 最近、お嬢さんがとんと来なくなった。

 一体どうしたのだろうか? 待てども待てどもその姿を拝めない。

 寂しい――いつになく寂しいのだが、ひょっとして飽きられてしまったのだろうか?

 他の男の所へ遊びに? 何か別の楽しいことを見つけたのだろうか?

 それはいい物件なのか、それとも優しい人なのか、楽しい場所なのか――

 なんだっていい、どうだっていいから、私の所にもまた遊びに来てほしい。


 けれども、やはりお嬢さんは来ることはなかった。

 いったいどうしたのか。まさか事故にでもあったのか。

 想いを同じにしているのか、白足袋に茶虎の好敵手さんも、素知らぬ顔でお嬢さんの特等席に座りながら、どこか憂鬱気で、物足りなさげな顔で瞼を閉じている。

「……君も寂しいんですか?」

「……フン」

 鋭く目を細め、鼻で溜息――

 ああ、なんだかんだで君は、お嬢さんの事が好きだったんですね? 思い切り喧嘩して、遠慮なく駆けっこして、傍でお昼寝して……。

 それは素敵なお友達だったんですね? 喧嘩している最中は絶対そんな風には思えないだろうけれど、普通の仲良しだったらかえってこんな寂しくなることも無かったのだろうね? 

 なんとなく、自然に切れてしまうようなそれと、何度も全力でぶつかった敵――

 そのどちらもとても得難いものだけれど、もし、次が望めるのなら、君はどれを選ぶのかな?

「……お嬢さんが来たら、今度は何をしましょうかねえ……」

「……」

 好敵手さんは、また私をじろりと睨み付け、そしてそのまま庭先を見つめた。


 ああ、そうだね? お嬢さんは今、どこにいるのか――

 私もその隣に腰を下ろして、じっと庭先を眺める。


 ……ああ、寂しいなあ……寂しいですよ……。

 ……ねえ? お嬢さん? 今度会う時はまた……何をして遊びましょうか……。

 ねえ?

 

 ……。

 …………。

 ………………――――。

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