第13話 ある月夜。

ある夜、食後のテレビ視聴中、窓の向こうからチリンリンリンと音が聞こえた。


 お嬢さんが、今まさにそこを通っている。それに気付いてしまった私はそこで思わず口笛を吹いてしまい、ニャーと返事が聞こえ、通り過ぎた鈴の音が戻って来るのをまた耳で理解する。

 腰を上げ、私は直近の掃き出し窓へ行き、そこを開ける。

 鈴の音がまた舞い戻り――行き過ぎてしまったのだろう――沓脱くつぬぎ石を台にして背伸びし、夜の我が家にお嬢さんが舞い降りる。

 そしてすぐ、お嬢さんは私を誘うようぷりぷりと尻を振り、颯爽と二階へと階段を上がって行く。

 その後ろを追随しながら、今日は何かなとその気配を窺う。寝室の窓から屋根へと出たがるので、私は望まれるままその窓を開け彼女を寒空の下に出してやる。

 と、その先――冬の夜空には丸いお月様が上がっていた。

 シンとひんやりした空気と、星明りが辺り一面に降りていた。

 そこ此処で、あらゆるものを黒く薄く影を伸ばしている。

 それを一度見渡し、お嬢さんは、トコトコと屋根の西端まで行き、その外縁にちょこんと座り込んだ。

 そして、その真っ直ぐ先にある白いお月様を眺め出す……。


 風流に、吐息しているようだ。

 白いそれが朧月のよう夜風に流れる。

 ぼんやりと浮かぶ猫の後姿が、月光に揺蕩う中、私も風の彼方を見つめ、ほう、と息を吐くのだった。

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