承
「わかりました。それではお気をつけていってらっしゃいませ」
そう言って笑顔を浮かべ、綺麗なお辞儀をする受付嬢に見送られて組合の建物を出たあなたは、『
『天恵』とは、この世界の者達が生まれつき与えられた特殊な技能であり、個人差はあるが一人につき、1~3個の天啓を持つのが一般的だ。
大半の人間が持つ天恵の数は1個であり、2個以上の天恵を持つ例は稀である。3つ以上ともなれば、国に一人か二人程度しかいない激レアだ。余談だが、かつて大魔王を倒した伝説の勇者は天恵を7個所持していたと言われている。
その天恵の内容は個人によって異なり、複数の人間が同じ天恵を所持する事は無い、と言われている。まさしくその人だけの、オンリーワンの特殊技能という訳だ。
しかし、そこで問題になるのがまさにその内容である。天恵の内容はピンからキリまで様々であり、雷を自在に操ったり、何もないところから剣を何本も生み出したりといった戦闘向きで強力無比な天恵が存在する一方で、
あなたは、その天恵を2つ所持していた。前述の通り、天恵を2つ持つ人間は稀であり、有用な天恵を2つ持っていたなら、エリート街道を歩む事も容易かっただろう。
しかし、あなたの持つ天恵は、残念ながらひどく使い道に乏しい物であった。
【
任意発動型。
一定範囲内にいる猫の数と、おおよその居場所がわかる。
また、会った事がある個体の場合、離れていても正確な居場所が把握できる。
【
常時発動型。
猫に懐かれやすく、仲良くなれる。
以上が、あなたが持つ2つの天恵の内容だ。あなたは天性の
あなたの親愛なる幼馴染である領主の娘が泣いて羨むような黄金の組み合わせだが、問題はこの天恵が普通に冒険者をするには全く役に立たないという事だ。
しかし、猫探しをするには大いに役立つ天恵である事は間違いない。
あなたが発動したのは、猫探知の天恵だ。領主の娘が飼っている猫は、全て姿と名前を把握している為、どれだけ離れた場所にいようと正確に居場所を把握できる。
天恵によって判明した情報によれば、依頼書に書いてあった通りに、領主官邸から離れている猫は3匹いた。
しかも、その3匹が全員、街から遠く離れた場所にいるではないか。
いつもの事だが、ハードな猫探しになりそうだ。あなたは改めて気合を入れた。
さて、ここで一つ、辺境の田舎町ではあるものの、猫がそう簡単に町から出て遠い場所に行けるのだろうか? という疑問を抱いた方もいるかもしれないが、そこで関わってくるのが、やはり天恵である。
【
自動発動型。
あなたが飼育する動物の能力を強化する。
強化量はあなたが対象に抱く愛情に比例する
【
自動発動型。
至近距離に居る動物や魔物に対して畏怖の感情を抱かせる。
これがあなたの幼馴染であり、猫達の飼い主である領主の娘が持つ天恵の内容だ。これらの天恵の効果によって、彼女が猫に多大なる愛情を寄せる事で猫達の能力が大幅に……それこそ生半可な魔物なら容易く返り討ちにする戦闘力と、荒れ地や険しい山でも踏破し、過酷な環境でも生き抜ける生命力を手にする程に強化されて、そしてそんな強化猫達が、飼い主である領主の娘にビビって頻繁に脱走しているのであった。
あなたの使命は、そんな脱走猫たちを探して、連れ戻す事である。
しかし領主の娘から向けられる愛情によってバチクソに強化されまくった猫達は、荒れ果てた荒野や極寒の雪山、魔物の住処と化した洞窟や遺跡だろうとお構いなしに侵入する。
よって、あなたの猫探しはいつも過酷な旅になるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます