第8話 惑星

 エマが消えた。消えたと思ったら今度は...。なんで突然消えて、突然姿を現すんだ。たしかに探し続けていたけれど...。感情をコントロールできない。頭が働かない。寒いのか暑いのか痛いのかうっとうしいのかあきらめなのか希望なのか。

 いつの間にか雨が上がっている。もう何日外に出ていないか分からない。テントから出てよろよろと歩く。

 

 「雨が上がってから話しましょ」


 お前はちゃんと話してくれるのか?ちゃんと俺に、この4年間何があったのか。



 「全て話してくれるのか?」



目の前にいた。黒いきれいな髪をなびかせて。



 「話すよ。全部」


彼女は真っ直ぐとこっちを見据える。


 「まずはこの4年間何をしていたのか、だけど」


僕はじっと見据える。


 「この音楽祭を開くための準備をしてた。この音楽祭が招待制なのは知ってるでしょ。私のところにも4年前に招待状が届いたの。」


その日から僕は。


 「そして私は選ばれたの。」


選ばれた。エマもそんなようなことを言っていた。


 「この音楽祭の発祥って知ってる?遥か昔の人々が夜空に輝く星に願って楽器を持ち寄ったことが初めと言われているわ。多分、現代の人のように平和や子孫繁栄を願ったんじゃないかって思うの。」


彼女は夜空を見上げる。


 「そしてその願いが叶った。」


 「叶った?今言った願いはあくまでも例えでしょ?当時の人達が何をお願いしていたかなんていつまでも分からないよ」


 「ふふふ、たしかにそうね。当時の人の願いは分からないわ。だけどいたの!」


彼女が僕の方を見た。口元に笑みを浮かべて。


 「いた?どういう意味?」


 「当時の人々が願った先。この地球に降りてきたの」


少し考えてすぐに自分の導き出した答えを否定した。そのまま彼女を見つめる。彼女もしっかりとこっちを見ている。


 「宇宙人?そんなの...。」


そんな馬鹿な話しがあるか。


 「私もそんなすぐには受け入れられなかったわ。だけど、4年前。当時の音楽祭の主催者と話したの。ちょうど今と同じ状況ね。あなたは選ばれたと言われたわ。そしてあなたと、他に選ばれた人達で次の音楽祭を開催してほしい、と。」


 「...。」


 「...。何も言ってくれないのね」


 「それを聴いてどう反応すればいいんだよ。」


 「たしかにね。ごめんなさい。」


 「...。」


 「だから次の開催はあなたにお願いしたいの。他の方にもお願いしてあるから1人じゃないわ」


 もしかしたらエマも...。


 「...。その後はどうするの?」


 「まずわ、今回この音楽祭を一緒に開いたメンバー達と共同生活をするわ。その後でそれぞれが別の惑星へ行き地球の音楽を伝えるの!」


嬉嬉とした様子で話す。彼女を前にしてどう言葉をかけたらいいか分からない。僕はしばらくその場を離れられなかった。

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