第6話 4年前

 「私ピアニストになる」


突然夢を告白した幼なじみ。小さい頃からピアノレッスンを受けていた彼女のことだからそんなことだろうとは思っていたけど。


 「しばらく会えなくなるけどまたね」


予想はしていたけれど胸の奥から少しずつしぼんでいく感覚があった。


 「近くの大学じゃないんだ」


 「海外留学を積極的に行っている学校だから、私も海外に行くことになると思う」


 「すごいね。なんか世界を又にかける感じ」


 「ははは、まだ、これといって活動もしてないんだから。」


 「遠くに行っちゃうのか‥。」


 「でも、音楽は人と人を繋げるよ。楽器があればそこはライブ会場になるの。音楽はいつでも優しく微笑んでくれる」


 「俺に哲学的な話しは分からないよ」

  

 「ふふ、そんな難しいこと言ってないと思うけど」


少しの沈黙。


 「招待制の音楽祭があるって知ってる?私ももらったの。招待状」


 うつむき加減でその話しをぼんやりと聞いていた。その日は珍しくひょうが降っていたので足元に少し積もっている。石つぶくらいのひょうを踏んで、ジャリっと音を立てる。


 「バイバイ。またね」

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