第43話 お家デート①
今日は久しぶりに
なのでウキウキ気分でデートの準備をしていたのだが、突如こんなメッセージがスマホに届いた。
『今日は、お家デートにしませんか?』
お家デート……
その単語は聞いたことあるのだが、その詳細が僕にはよくわからない。
そもそも、家の中なのにデートなのだろうか? と思ってしまう。
『いいですよ』
とりあえず無難にそう返してみると、すぐに返事が返ってくる。
『それでは、準備しておきますので10時過ぎくらいに家に来てくれますか?』
『わかりました』
うーん、しかしお家デートねぇ……
それはこの前遊びに行ったときと何か違うのだろうか?
もしかして、先日
……ちなみに、
だから、あまり過激なことには発展しない……、と思われる。
(……
…………………………
…………………
…………
チャイムを押してしばし待つと、伊万里先輩が笑顔で迎え入れてくれる。
こういうのも、なんかいいな……
「いらっしゃい、藤馬君♪」
「お邪魔します」
伊万里先輩の今日の格好は、薄手のセーターにショートパンツという、またしてもラフな格好である。
(なんだか、ここのところショートパンツばかり見ている気がするな……)
先日は麻沙美先輩もショートパンツだったし、伊万里先輩も家の中だとショートパンツなことがほとんどだ。
二人ともそういったファッションが好きなのかもしれないが、どうしても目が脚に行ってしまうので困ったものである。
素晴らしい脚線美を見れて眼福ではあるのだが、スケベな視線ばかり向けるワケにもいかないので自制が大変なのだ。
「え~っと、今日は小鞠さん達は……」
「お母さん達は、今日はデートですね」
なんとなくそんな気はしていたが、どうやら今日は二人ともいないらしい。
なんだかんだ、これまで完全に二人きりになることはあまりなかったので、ちょっとドキドキする。
「そうですか。じゃあ、これ、二人の分もあるので、冷蔵庫に保存しておいてください」
僕はそれを誤魔化すように、先程駅前で買って来たケーキセットを手渡す。
「ありがとうございます。私達二人の分は、あとで一緒に食べましょうね♪」
伊万里先輩が嬉しそうに笑う。
この笑顔を見れただけでも、お土産を買ってきた甲斐があるというものだ。
「それで、今日は何をするんでしょうか?」
「それはですね、今日は鍋パーティをしようと思いまして」
そう言って、伊万里先輩は台所から少し大きめの鍋を取り出す。
「鍋、ですか。しかし何故……?」
今は5月の下旬。季節的にはもう鍋のシーズンは終わっていると言っていい。
「それがですね、先日親戚から、大量のズワイガニが送られてきたんですよ」
「っ!? 蟹ですか! 凄いですね!」
よく見ると、伊万里先輩の足元には大きめの発泡スチロールが置いてある。
つまり、あの中身は蟹ということなのだろう。
蟹というと冬のイメージが強いが、北海道の方ではズワイガニの旬は4月~5月らしい。
もしかしたら、伊万里先輩のご親戚はそっち方面の方なのかもしれない。
「ということは蟹鍋ですか。それは凄く楽しみです。……でも、いいんですか? 僕が頂いちゃっても」
ズワイガニと言えば高級食品である。
しかも、これは初瀬家のために贈られたものなので、僕なんかが食べていいのだろうか?
「いいんですよ。結構よく届くので。それに、三人じゃとても食べきれませんから」
ズワイガニがよく届くって、凄い環境だな……
ひょっとして、親戚の方はお金持ちか、漁師の方だったりするのだろうか?
「そういうことであれば、お言葉に甘えさして頂きます」
僕だって正直に言えば蟹は食べたい。
遠慮しないで良いというのであれば、是非とも頂きたいところである。
「それじゃあ、準備しちゃいますね」
「あ、僕も手伝いますよ」
二人で台所に並んで、鍋の準備をする。
こういうのも、なんだか夫婦みたいで楽しいな。
これが、お家デートのだいご味というヤツなのかもしれない。
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