第6話
あの後、セルシウスについて言及されそうになったので、全力で逃げたらため息を吐かれながらしょうがないわねと言って諦めてくれた。
いやほんと。ここでセルシウスについて話したら多分変な子扱いされるので、あまりセルシウスについては話したくないんですよホント……。
夜、アバドンについてどうやって対処をするかの話し合いを皆さんが全員意見を出し合っており、もうすぐ日付が変わる頃なのにまだまだ終息しそうにない。
ちなみに俺は、まだここに配属されて1週間程度しか経っていないので、早々に戦力外通告を出された。いや、まぁたしかに俺はまだまだ作戦を出すのにな力不足な点は否めませんが、少し悲しい……。
なので俺は、現在拠点の外に出て念の為襲撃者の警戒という名目の元、少しいじけていた。
べ、別にいいもん……ここでは力になれない分、アバドンとやり合う時に挽回するし……。
とか何とか思っていたら、俺の隣にスっと座ってきた人がいた。
ヴィクトリア様だった。
「隣、座るぞ」
「おっふ!?」
突然のことに驚いた俺は、心臓がめちゃくちゃ跳ねた。多分だけど絶対三センチくらいは跳ねたと思う。
「ヴィっ、ヴィヴィヴィヴィクトリア様!?どうしてここに!?」
「何、作戦立案に私は不要かと思ってな。こうして休憩している」
ヴィクトリア様曰く、騎士団全体の士気がとても高く、部外者のヴィクトリア様が口を出すより、騎士団の中で完結させた方がいいとの事だった。
確か、この騎士団ってアイシャさんからの情報によると、ヴィクトリア様の姿を見ただけな人でもものすごく羨ましがり、狂気的になると聞いていたから、ヴィクトリア様が口出した方がもっと士気は上がると思うんですが……まぁヴィクトリア様が決めたことだから、俺が言ってもかわんないか。
「それでユキナ、君に聞きたいことがあるのだが」
「はい、なんですか?」
ヴィクトリア様が聞きたいことなら何だって教えてあげます。例え言い難いことでもヴィクトリア様になら――――
「セルシウス、という存在に関してだが」
――――………ごめんなさい、やっぱさっき思ったことは無しで。
「あぁ、勘違いしないで欲しいのだが、私はアイシャやアーディのように警戒して聞いている訳ではない。確認だ」
「確認……?」
いや、なんでアーディさんとアイシャさんが警戒するということは分からんが、確認……?
「キミ、その体に神を宿しているな?」
その言葉を聞いた途端、体が凍った。
「……どうして、そう思ったんです?」
「何、簡単なことさ。君の視線が時折違う方向を向いたことや、片目だけ色が変わる……同じ神宿しだったらそれだけで分かるさ」
「なるほど、同じ………ん?」
今、なんて?同じ……?
「初めてだ。私以外の神宿しに出会ったのは」
そして、ゆっくりとこちらを向いたヴィクトリア様の片目は、緑色に輝いていた。
……う、美しい……。
「……て、そうじゃないそうじゃない!」
あっぶねぇ……危うく見蕩れて声も出ずにずっと見つめて浄化されるところだった……全く存在自体がある意味危険だなヴィクトリア様は。
「ヴィ、ヴィクトリア様も神を―――えっと、神宿し?なんですか?」
「あぁ、そうだ」
………おい、セルシウス。人が神に宿っていることは結構珍しいみたいなこと言ってなかったか?
――――言ったよ。でも、これはちょっとボクでも予想外さ。
「私の身に宿っているのはシュトラム―――風を操る神だ。昔は、この世界を嵐で危うく埋め尽くして滅亡させる寸前までやらかした神らしい」
……なんかそれ、セルシウスに似てるな。
「えと……俺の身に宿っているのはセルシウスです。氷を操る神で、世界を一度氷漬けにして滅亡寸前までやらかした神です」
「ふむ………滅亡寸前?」
「はい、滅亡寸前です」
――――おい、ちょっとセルシウス。
――――おっとすまない。ちょっと今別件に集中してて聞こえなかったなぁ。
絶対わかっててやってるコレ。もしかしてこれって他の神宿しの人の神もこんな感じか!?
「………えと、ヴィクトリア様が神宿しになったのはいつぐらいのときですか?」
「確か……12歳の頃だったか?急に頭の中に変な声が聞こえて、気付いたら入り込まれていた」
「…………」
うわぁ……これ、状況が俺の時とほぼ同じだぁ……。
この時、俺とヴィクトリア様の中で『神宿しの神はやべぇ神』という共通認識が出来上がった。
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新作あるよぉ!面白いからみんな読んでぇぇぇ!!
『ヒロイック~戦場に花咲く一輪のイレギュラー~』
現ファンランキングでもう13位にあるから!作者の好きな設定盛りだくさんだからぁ!
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