第2話
その後も、アーディさんが俺の勤務状況を聞いて、ヴィクトリア様が俺の事を褒めてくれるという何これすっごい幸せ状況を堪能したままエントランスへとやってきた。
「おはよう新人クン、アーディヴィクトリア様」
「おはようございます、団長」
「おはよう団長」
「おはようアイシャ」
すると、そこにはアイシャさんがいつもの位置にいて、俺たちに挨拶をしてくる。そういえば、アイシャさんって見た時はいつもあの位置にいるのだが、ちゃんと睡眠とか取っているのだろうか。
「新人クン、今日もルミネちゃんと朝練はしなかったの?」
「はい。まだヴィクトリア様と激しく打ち合っていた時の痺れが取れないみたいで」
三日前のヴィクトリア様との鍛錬は、思ったよりもルミネさんの体に負担をかけていたらしく、起きた次の日は両腕の痺れが凄かったらしい。
なんでも、腕を動かすことすらも出来ないのだとか。
今は大分和らぎ、日常生活の方に支障はないが、まだまだ剣を振るのは難しいらしく、完全復活にはあと二日必要だろうとルミネさんは言っていた。
「……その、本当に済まないとは思っている」
「別に、ヴィクトリア様が謝ることじゃないと思いますよ?ルミネさんもそう言ってましたし」
そして、ヴィクトリア様はルミネさんの現状を知ると、すっごい罪悪感に駆られており、ずっとこの調子である。だから、ルミネさん。早く元気になって。
「それに、ルミネさんももう二度とあんなヘマはしないって張り切ってましたし、本当に気にする必要は無いと思いますよ?」
「……ありがとう、ユキナ」
すると、ヴィクトリア様が俺の頭を撫で―――ファッ!?
「なっ、ななななな何をっ!?」
「あっ………いや、済まない。どうも癖でな……」
ガントレット越しだったが、ヴィクトリア様が俺の頭をなっ、なななな撫でた!?
「い、いえ!別に気にしてません!なんならもっと撫でても――――」
「アーディ。ちょっと新人クンの頭を冷やさせてからそのまま巡回に行きなさい」
「分かったわ団長。ほら、行くわよユキナくん」
「え!あ、ちょ!アーディさん!?」
俺は、そのままアーディさんに引っ張られた。全然抵抗できなかった。
「……済まないなアイシャ。ユキナは私が触れるといつもあぁなってしまうんだ」
「いえ、新人クンに関しては、あれはもうどうにもならないと思ってるので……それに、ヴィクトリア様とこうして二人っきりになれるのはタイミング良かったです」
はぁ、とアイシャがため息を吐いたあとに、真面目な顔に戻った。その事にぴくりと眉を反応させたヴィクトリアは、アイシャに近寄る。
「何か、あったのか?」
「えぇ……これはまだ内緒にして欲しいのですけど……」
アーディさんに連れていかれた俺は、少しばかり冷静になり、そのまま今日はアーディさんと巡回することになった。
「……すみませんアーディさん。変なこと口に出してしまいそうになってしまって」
「いいのよ、別に。ユキナくんがどれだけヴィクトリア様に憧れているかは聞いたつもりだしね。少し妬けちゃうけど」
あの時の俺はどうかしていた。ヴィクトリア様に頭撫でられてパニクった俺は一体何を言おうとしていたのか。アーディさん達が止めようとしていたから、相当やばい事だったはず。
感謝しないとな、ほんと。
「それでユキナくん、今日の巡回ルートだけど―――!」
「―――っと!」
俺たちに向けて二つのナイフが飛んできた。アーディさんは腰から素早く剣を抜いて弾き飛ばし、俺は顔を横にずらして回避。
目線を向けると、そこには全身黒ローブのドラゴンスネイクの構成員がいた。
「……ここ三日は現れなかったから、諦めたのかなって少し期待はしてたんですけど」
「まぁ、そうはならないわよね、流石に」
腰から剣を抜いて構える。さて、初めての実戦だぞアンデルス。頼むから校舎の方とかには何も被害はないようにお願いします!
「―――ハッ!」
「!」
先手必勝。相変わらずどうやって侵入しているか分からない構成員の懐へ潜り込み、そのまま剣を振るう。ナイフを取り出し、俺の剣を受け流そうと構えた襲撃者だが、アンデルスが一瞬だけ光ると、襲撃者のナイフはなんと切れてしまった。
「なっ!?」
「!!」
襲撃者が驚いて声を上げたが、俺もビックリした。嘘やん。これは切れ味がいいってレベルじゃないぞ……?
「セイっ!」
「くっ……!」
そしてすかさず、アイシャさんが俺の後ろから高速の一撃を放つが、大きくバックジャンプをされて避けられてしまう。
「……はじめての共同作業ね。あいつからは色々と聞きたいことがあるから、必ず捕まえましょうね」
「了解です、アーディさん」
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『ヒロイック~戦場に花咲く一輪のイレギュラー~』
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