復活、悪魔の大災厄

第1話

 ヴィクトリア様がこの騎士団の方で活動をし始めて三日ほどが経った。セルシウスの警告通り、いつの間にか増えているアバドンの一部だという石は見つけてからすぐに破壊するようにしている。しかも、ヴィクトリア様にその存在を教えたら更に破壊する効率が早くなったので、非常に助かっている。


 おかけで、セルシウスが感知できる反応も数える程になり、このままであれば大丈夫だろうと昨日の時点でセルシウスは言っていたのが……。


「………増えてるね」


「えぇ……」


 俺は、部屋の壁に立てかけてある魔剣――――ではなく、いつも使っている方の剣に手を伸ばし、腰にいつも通りに差しておく。


 しかし、増えているねぇ…説明されなくとも、それはアバドンの体の一部であろうことは簡単に予測できるが、いつの間に……。まさか寝ている時か?


「……ふむ。考察もいいがユキナ。アンデルスを見てみなよ」


「ん………ん?」


 セルシウスに言われた通りに、アンデルスの方へ目線を向けると、何故か青薔薇色の剣がぴょんぴょん跳ねていた。まるで、自分を使えと言っているように。


 そう、跳ねていた。


「……よし、行くか!」


「こらこらこら。見なかったふりをするのは辞めないか」


 見なかったふりをして目線を外したら、目の前にセルシウスの顔があった。


 いやいやいや、だってさ?急に魔剣が跳ねるとか意味わからんやん?


 確かに、この魔剣には意思があるとは教えてもらったし、言葉に反応して剣がキラリと光ることからちゃんとあることは確認したよ?


 跳ねるは予想外じゃん……。


「いいかい?ユキナ。ボクとこの子はね、確実に手助けにかるからこうして積極的にアピールをしているんだ」


「いや、たしかにそうかもしれんが……」


 でも、昨日振ってみて思ったけど、この魔剣はここで使うには狭すぎるんだよほんと。もしうっかり勢い余って校舎とか傷つけたらどうすんの?反省文じゃ絶対足りないからね?


「いいかいユキナ。魔剣は良くも悪くも全て使なんだ。意思があるとはいえ、基本この子だってそうなんだ。キミが校舎を傷つけたくないと強く願えば、この子が上手くやってくれるし、それもまた鍛錬だろう?」


「鍛錬………」


 ………なるほど。確かに、魔剣を上手く使いこなすということは新しい鍛錬になるな。常に強力じゃなくて、弱い攻撃と強い攻撃を混ぜ合わせたりして、新しい攻撃の形を生み出すこともできるし、戦術の幅が広がる。


 チラリとアンデルスを見る。セルシウスが俺を説得にかかった時点で飛び跳ねるのはやめていたが、その代わり……なんだろう。ものすごくキラキラした目で見つめられているような気がする。


 ………まぁ、一昨日と昨日は飛び跳ねるなんてことはしなかったし、今日こんなアクションを起こしたのは何か理由があるかもしれないからな………持っていくか。


 俺は、腰に差した剣を一旦外し、アンデルスに向かって手を伸ば――――す前に、俺の手にアンデルスが収まった。


「……今日はよろしくな。頼りにしてるぞ」


「…………」


 相変わらず、アンデルスから声は聞こえないが、何やら「任せて!」と聞こえた気がした。




「おはようユキナ……おや?今日はその魔剣を持ってきたのだな」


「おはようございます、ヴィクトリア様」


 部屋の外に出ると、ヴィクトリア様とちょうど鉢合わせした。朝からちょっとした運に感謝しつつ、ヴィクトリア様と会話を楽しむ。


 ヴィクトリア様がこの騎士団に滞在している間、なんと俺の隣の部屋を借りているみたいで、最初はなんか緊張して眠れなかったが、今はもう慣れた。


「そうですね、今日はちょっと使ってみようかなって」


「そうか、それは楽しみだな。私は君がそれを振るう姿を見ていないから」


「が、頑張ります……」


 ヴィクトリア様は微笑んでそう言ってくれたが、俺はそれに勝手にプレッシャーを感じてしまう。……ここで無様な真似とかしたらどうなるのだろうか。想像するだけで恐ろしい。


 もしヴィクトリア様に「期待はずれだったな」とか言われたら俺、故郷に帰ってからひっそりと死ぬかもしれん。冗談抜きで。


 ………これは下手なところは見せられないぞ俺!


「………あら、おはようございます。ユキナくん、ヴィクトリア様」


「あ、おはようございます」


「おはようアーディ」


 一緒に歩いていると、前からアーディさんが部屋から出てきた。一瞬俺とヴィクトリア様を見やると、何を思ったのか一瞬だけ頬を膨らませたと思ったら態々俺の隣に位置取りしてきた。


 ……え、何故わざわざ俺の方に?


「ところでヴィクトリア様。ユキナくんはお仕事の方はどうですか?」


「よくやっていると思うぞ。それに、実力だけなら騎士団全体を見渡してもトップに近い」


「良かっです。のユキナくんがヴィクトリア様から見てもいい評価のようで」


 ……えへへ、俺今ヴィクトリア様に褒められたぞ。おい、聞いたか!セルシウス!


 ――――キミ、絶対今反応するとこそこじゃないからね。。



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 新作の方投稿してますので、宜しければ読んでみてください!作者の好きな設定がこれでもか!ってくらい盛り込んでるんで。


『ヒロイック~戦場に花咲く一輪のイレギュラー~』

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