第11話

 セルシウスが一度、その剣を振っておいた方がいいとのことなので、とりあえず構えてみる。この剣を構えて一番最初に思った感想は『しっくりくる』だった。


「キミは今、その子の事をしっくり来ると思っているはずだ。そりゃそうさ、ボクの子だし、何よりもその子には意思があるからね。使い手の経験を読み取り、一番使い慣れた形、そして重さに自動的に合わせてくれる。それが魔剣というものさ」


「なるほどな」


「気をつけたまえ、何より私の血をふんだんに使った魔剣だからな?下手するとここら辺一帯凍るからね」


「よっし。魔剣を振るのは今度にしよっかなー」


 流石にそんなことはやりたくないので、後々この王都から離れた森の中で実践するということで。ここ一帯を氷漬け?団長とアーディさんに怒られるだけじゃ済まないので、この場所ではアンデルスを使わないようにしよう。


「キミ、なんのために氷柱地獄ニブルヘイムがあると思っているんだい?」


「………!なるほど!」


 確かに、その発想はなかった。


 氷柱地獄ニブルヘイムは、自身の周りに特別な結界を張り、世界から一時的に切り離す――――異世界化を利用した魔法である。


 もちろん、実際の方には何も影響はないし、被害も当然ゼロに抑えられるため、安心してアンデルス振るうことが出来る。


 そうと決まれば話は早い。早速、アンデルスを地面に突き刺して魔力を込める。


氷柱地獄ニブルヘイム


 呟くと、一瞬にして視界が銀色の世界に早変わり………ん?なんかいつもと手応えが違うような……。


「早速効果が出てきたね」


「セルシウス」


「今君は、いつも通り氷柱地獄ニブルヘイムを発動させたのに、少しだけ違和感を感じただろう?正しくアンデルスの効果が発動された証拠さ」


 キラリと光ったアンデルスを地面から引き抜いて持ち上げてみる。


「その子の当時の役目は、ボクの魔法をより強化することだ。つまり、今まで残念なくらいの範囲しか出来なかったこの空間は、前までとは比べ物にならないくらい広がっているはずだよ」


「そうなのか、お前……」


 そう呟くと、まるで肯定するようにキラリと刀身が光る。だがしかし、ぶっちゃけ氷柱地獄ニブルヘイムだけでは効果はあまり実感できないため、代わりにコフィンで効果を確かめてみる。


 俺がコフィンで作れる氷柱は、最大でもせいぜい3mほど。厚さも大体2m程度で、捕まえるとしたら人や、人型のモンスター程度しか無理である。


「コフィン」


 地面に突き刺し、氷の棺を完成させ―――なぬっ!?


「ふふっ、ビックリしてるねユキナ」


「ちょ……えぇ!?」


 目の前に現れたのは、およそ全長10m、厚さ7m程度の巨大な氷柱が出来上がった。


「おいおい……これは補助なんてもんじゃないぞ」


「いいや、それはどこまで行っても補助さ。なんせ、使い手がそもそも魔法を使えないとこの魔剣はただの切れ味がいい剣に成り下がるのだから」


 いやいやいや、だからってこれは強化されすぎじゃないか?


「……とりあえず、もうこの剣の試しぶりはいいや」


「おや、本当にいいのかい?」


 うん、もういい。あと、普段の任務でも絶対アンデルスは使わねぇ。うっかり使ってしまった暁には軽く校舎の方にも被害が出てしまう。


 だからお前暫く出番なしな。引き抜いたはいいけど、お前強すぎ。


 そんなことを思っていたら、なんかアンデルスの方から「ガビーン!」ってなんか聞こえた気がした。

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