第10話
その後、魔剣を抜いたので館長の方からどうぞ遠慮なく貰ってやってください!と言われたので遠慮なく貰った。魔剣云々に関しては本当に興味がなく、セルシウスさえいてくれれば大抵何とかなるのだが、セルシウスからも有難く貰っておけと言われたので貰った。
そして、ルミネさんの用事も済んだことなので、学園へと帰宅。そして――――
「――――やぁ!」
「ふっ!」
学園の訓練場でヴィクトリア様とお手合わせ中である。ルミネさんは激しく動き回り、魔法の自由度を活かした魔剣でスキを作ろうとしているのに対し、ヴィクトリア様はあの時――――俺を助けてくれたあの時のように一歩も動かずに全て受け流し、時には受け止め、まるで山のような存在感がある。
………ぶっちゃけるとすっごい羨ましい。あぁ羨ましいとも!俺だってヴィクトリア様とお手合わせしたいもん!それで「強くなったな」って優しく微笑まれて、そのままの流れで頭なでなでとかされたいもん!
でも……でもっ!今はっ……!この手にある魔剣について知ることの方が大事なんだ……っ!
「……ごめんってキミ。だからさ、そんなにボクの事を睨まないでくれるかい?そろそろその手から血が出そうだよ?」
目の前でふよふよと浮いているセルシウスが申し訳なさそうな目で俺を見る。いや、分かっているんだ。確かにこの魔剣について知ることも大事だ、分かっている。
「でも……やっぱり羨ましぃぃぃぃ……っ!」
「漏れてる漏れてる。声が漏れてるからね」
おっといかん。ヴィクトリア様を心配させる訳にはいかんからな。だから早く話をしよう。俺をあの手合わせからついつい興味を無くすほどの内容であってくれ。
「それはおまかせ。きっと両目が飛び出てしまう程ビックリするだろうからね」
と、クスクス笑うセルシウス。さてさて、一体どんな説明がセルシウスの口から飛び出て――――
「その子はね、ボクの子供だ」
…………………………………。
「なぬーーー!!!!」
「ほらね、びっくりしたでしょ?」
こ、子供っ!?この魔剣がセルシウスの子供!?
「ってことはお前!既婚者か!?」
「それは断じて違うと否定させてもらうよ。そもそも
、ボクはまだ処女だ」
え?神にもその概念とか存在するの―――ってやべ、俺思いっきり声を出して………あれ?気づかれてない?
声を出したことに気づき、ヴィクトリア様の方を見たが、何故か俺の様子に気付いた感じはなく、手合わせの方をやっていた。
どゆこと?
「キミが絶対大声出すと分かっていたからね。消音結界のほうを張らせて貰ったよ。これで、どんなに喋ってもキミの声があちらに聞こえることはない」
「そうだったのか……」
さすが魔法スペシャリストだな。氷法以外はそれほどしか使えないと言っていたが、結界魔法ってそれなりに難しいって聞いたことあるぞ俺。
「てかこれ!お前の子供ってどゆこと!?」
「ボクの血を材料としてふんだんに使っているから、ボクの子と言っても過言ではないだろう?」
え、それは過言じゃね……?と心の中で思っていると、すいーっとこちらに近づき、魔剣を撫でるセルシウス。
「この子の名前はアンデルス。鍛冶の神であるヘファイストスに作ってもらった、私専用の魔剣さ」
「セルシウス専用………」
………あれ、じゃあなんで俺これ持ててんの?おかしくない?
「そりゃ、今のキミとボクは一心同体だ。キミの中にボクがいるのだから、キミが持てても別に不思議ではないだろう?」
「た、確かに……?」
そこら辺ちょっと怪しいが、まぁセルシウスがそう言うのならそうなんだろうな。
「それに、この子もキミの事が気に入ってくれてようだからね。力になってくれると思うよ」
「さっきから思っていたが、どうしてセルシウスはアンデルスの事をその子とか、この子とか言ってるんだ?」
普通、剣ならば『剣』と明確に言うのでは?
「あぁ、その子には『意思』があるんだ。自分で考え、実行することが出来るほどの自我がある」
「え……?」
そうセルシウスが言うと、アンデルスの青薔薇色に染められた刀身がキラリと光る。え、マジで意思あるの?
「その魔剣、生かすも殺すも君次第さ。ま、ボクの子だからボクと同じようにキミの事を気に入るから大丈夫だと思うけどね」
もう一度、同意するように剣が光った。
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