第6話
アワレティア王都の市場は大変よく栄えている。騎士団に入ってからここに来ていないが、入る前の滞在期間中は、よくここの散策をしていたものである。
現在の俺たちの布陣は、真ん中に早くヴィクトリア様と鍛錬がしたくてしたくてたまらないルミネさん。一歩下がって右隣に、俺がルミネさんに腕を引かれながら歩いており、その反対側にはヴィクトリア様が常に周囲を警戒するように歩いている。
そんな俺たちの雰囲気は、周りの人から見ると異様な空気らしく、チラリと一瞬目線を向けられるが、ルミネさんの胸元にある王立アワレティア女学園の校章ワッペンを見た瞬間、「あぁなるほど」みたいな感じで頷いた後に、俺に向かってぺこりと会釈してくれた。
「結構知られてるんですね」
「アワレティア女学園がよく狙われるというのは有名な話だ。住民も、それを承知していて協力してくれているのだろう」
それはなんと心優しい国民なのだろう。少しだけ感動した。
「ルミネさん」
「なんですか?」
「この買い物の目的を聞いてなかったけど、一体何を買いに来たんだ?」
「そうですね。お気に入りのシャンプーが切れかけなのでそういった日用品の確保と、少々気になる噂があるので、それを確かめようかと」
「噂?」
「はい」
ルミネさんはこくりと頷くと、やっと掴んでいる俺の手を解放してくれた。少し歩きにくかったから助かった。
「なんでも、とあるオークション会場で、私達が魔法で作る魔剣とは違い、魔法の効果が刻まれた『魔剣』が売り出されると」
「へぇ?魔剣かい?」
うおっ!?ビックリした!どうしたセルシウス。そんな興味を引かれる話題だったのか?
体の中からニュルりと姿を表し、後ろから俺にしなだれかかってきたセルシウスに目線だけ向ける。
へい、セルシウス先生。魔法の効果が刻まれた魔剣ってどういうことですか?
「魔剣、今の言葉で言うならば、
へぇ……そりゃまたなんと恐ろしくて魅力的な物だな。別に俺には要らんが。
「へぇ。どうしてだい?」
いや、だって俺にはセルシウスいるじゃん。セルシウスの方がそんな魔剣とかよりもよっぽど頼りになるよ。
「………ふ、ふーん?まぁ当然だけどね?」
と、セルシウスはなんか余裕そうに言うが、その頬は少しばかり赤くなっていて、顔も少しだけそっぽを向いている。
「ほう、魔剣か?確かにそれには興味あるな」
「やっぱり、ヴィクトリア様も興味でます?」
「そりゃあな。私は聖騎士である前に、一人の剣士だからな。強力な剣というものには不思議な魅力を感じるよ」
「そうなんですか、少し意外ですね」
「そうか?」
と、俺の目を見て肩をすくませたヴィクトリア様。いや、めちゃくちゃ意外ですよ。てっきり剣の性能にはあまり拘らない人だとばかり。
「ヴィクトリア様も気になるというのでしたら、早めにそちらを終わらせて会場に向かいましょう」
「分かった。でもまぁその前に――――」
「――――私たちを尾けている不届き者を倒すとしようか。剣の姫君。人目につかない場所へ」
「分かりました」
その言葉と同時に、俺たちはダッシュを開始する。余程隠密に地震があったのか、俺達が気付き、走ったことに驚いたのか、追ってくるタイミングが少し出遅れていた。
「そこの路地裏に行こうか。その方が私もユキナもやりやすい」
「分かりました」
そして、ヴィクトリア様の言うことはきちんと聞いてくれるから、今日はルミネさんの対応がすっごい楽である。表通りの道を90度直角に曲がり、舞台は路地裏に移る。
「私が剣の姫君の守りを担当する。ユキナ、私に君が今まで積み重ねた強さを見せてくれ」
「―――っ、はい!!」
よっしゃぁ!!なんかめちゃくちゃ力湧いてきたぞ!セルシウス!
「はいはい。あの女のセリフというのが少しだけ癪に障るが――――君の力、存分にこの国最強格に魅せてあげようじゃないか」
「
「っ、なに!?」
「これは……っ!」
「ほう……?」
尾行者二人が俺のテリトリーに入った瞬間、俺は地面に剣を突き刺し、限定世界を構築。
世界が、銀に閉ざされた。
「さて、俺は今非常に調子がいい―――最初から全力で相手してやるよ。凍え死ね」
そして次の瞬間、二人に向かった猛吹雪が炸裂し、次の瞬間には見事な氷像が出来上がっていた。
「お見事」
「さすがです、ユキナさん」
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