第5話
「ちょ、新人クン?……これ、本当に大丈夫かな……」
再び固まった俺の目の前で、アイシャさんが手をフリフリと振る。それで意識を取り戻した俺は、慌ててアイシャさんに頭を下げた。
「す、すいません団長……その、あまりの事態に現実を受け入れてなくて……」
「うーん……それなら、ルミネちゃんの護衛はヴィクトリア様だけにお願いする?」
「え、それは嫌です」
「真顔!?」
確かに、ヴィクトリア様がいたら緊張するが、その選択肢だけは絶対にありえない。
だって!ヴィクトリア様に成長したところ見せたいもん!
「頑張ります。ヴィクトリア様に対しては……頑張ります」
「新人クン?目線こっち向けて」
いやぁ……はは、ちょっとアイシャさんのお顔が素敵すぎて凝視できないですねぇ……。
――――仕方ない。ボクが手伝ってあげよう。
――――マジで?頼んだ。
どう手伝ってくれるかは知らんが、こういう時のセルシウスは信頼できるからな。安心して固まることが出来る。
――――いや、まず固まらないように君には頑張って欲しい。
おう。善処するわ。
「おはようございます、ユキナさんいらっしゃいますか?」
コンコンコンと、三回ほど拠点の扉を叩く音が響き、そこからひょこっとルミネさんが首を出した。
「おはようルミネちゃん。ちょっとこっちおいで」
「?はい、分かりました」
ルミネさんが顔だけじゃなくて全体を露わにする。今日は街に出かけるからなのか、いつもの学園の制服姿ではなく私服姿だった。白色のワンピースに少しだけ花の意匠が象られているだけのシンプルな服装だったが、すごくよく似合っていると思う。
そして、そのままルミネさんは三歩だけ歩き、ヴィクトリア様の方向を見た瞬間固まった。
「君が、剣の姫君か?」
「ヴィ、ヴィヴィヴィヴィヴィ――――っ!」
ルミネさんはカタカタと口を震わせ、そして叫んだ。
「ヴィ、ヴィクトリア様ーー!?」
「初めまして。アワレティア聖騎士のヴィクトリアだ」
流石ヴィクトリア様である。目の前で叫ばれても動じることなく騎士の敬礼をして見せた。この反応は慣れてるのだろうか。
「どっ、どうしてヴィクトリア様がここに!?」
「私が呼んだのルミネちゃん。聖騎士様がくれば。ルミネちゃんでもさすがに言うこと聞いてくれるかなって。ヴィクトリア様が来るとは流石に私も思わなかったけど」
「ということだ剣の姫君。ということだから、私も同行する」
「えっ……でっ、でも……」
そして、何故かルミネさんはちらっとこちら見た。どうして俺を見る必要があったのだろうか。
「……せっ、折角ユキナさんとデートだと――――」
「無事に街での用事が終わったのなら、私が手合わせの相手をしようか。好きなのだろう?」
「是非っ!よろしくお願い致しますわっ!!」
何かルミネさんが呟いたが、ヴィクトリア様が手合わせすると言った瞬間、目がキラキラになった。心なしか、しっかりと星がその目から飛んでいるように見える。
「行きましょう!行きましょうユキナさん!早く用事終わらせて!ヴィクトリア様と鍛錬です!」
「ちょっ!?腕引っ張らないで!」
そして、俺の元に高速移動してきたと思ったら、俺の腕をガッシリと掴みそのまま外に連れ出そうとする。こ、この子!完全にスイッチ入ってる!もう頭の中の目的は早くヴィクトリア様と鍛錬をすることしか頭の中に残ってないぞこれ!
「で、では!行ってきますね!団長!」
「行ってくる、アイシャ」
「はーい。行ってらっしゃい新人クン、ヴィクトリア様」
「青春ねぇ……」
「青春ですねぇ……」
ドアから出ていったユキナとルミネを見て、アイシャとアーディは呟いた。
「いいなぁ……私も新人クンとあんなふうにキャッキャうふふしたいなぁ……」
「団長……」
「えー?アーディは思わないの?」
「それはもちろん、めちゃくちゃ思いますけど」
「でしょー?」
この二人は、年齢的に言えばまだ21歳なのだが、貴族世界では既に行き遅れだなんて言われ、相手にされなくなってくる頃である。
「剣を使う女なんて野蛮だーなんて言われて、こうしてズルズル歳を取って―――あの子、私を貰ってくれないかしら?新人クンなら私、全然大丈夫なんだけど」
「それなら団長―――囲いますか?」
「それ、採用」
この二人、今までそういった類の言葉を言われたことがないために、ユキナの事を気に入るのは必然なのかもしれない。
こうして、ユキナの与り知らぬ所で、ユキナ囲っちゃおう作戦が計画されていくのであった。
「へっくしゅ!」
「大丈夫ですか?ユキナさん」
「な、なんか嬉しい感じがするけど寒気が……」
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レビューで余計な説明いらんとか言われてますけど、どこが要らないのか正直言うと分からないのです……一応、誤字脱字訂正の時にここいらないかもなーという部分は消したりはしてるのですが、皆さんが言ってる部分が分かりません。
ですので、教えてください。修正しに行きます
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