第4話
ポロッ。
「あ」
ガシャン!
「ああっ!」
ガツン!
「いっ、ごめんなさいごめんなさい」
「……………ねぇ、団長」
「何かしら?」
「ユキナくん……一体どうしちゃったの?」
「そうねぇ………緊張?」
あれから一日経った。昨日は特にあれから襲撃はなく――――というか、記憶があんまりない、
……ヴィクトリア様が来る?ここに?マジで?
あぁ……ダメだ。なんか色々と頭の中ごっちゃになってぼーっとしてしまう。さっきから食べ物落としちゃったり、お皿割っちゃったり、壁に向かって謝ってたりと、なんか色々やらかしている。
……だ、大丈夫か俺!?さっきちゃんと顔洗ったよな!?
――――………君、対応と思うことが完璧に女子だよ?
――――やかましい。
だってお前……ヴィクトリア様ぞ?命の恩人であり憧れの人ぞ?そんな人が来るって言うのに緊張するなって言われる方が無理だわ。
「しんじーんくーん?」
ど、どうしようか……ヴィクトリア様とかに何か失礼なことをしないか不安だ……というかそもそも俺の事覚えてくれてるかな?
「ユキナくん?お見えになったわよ?」
あぁ……なんか不安が一気に押し寄せてきて――――
「久しぶりだな、少年」
「あ、お姉ちゃ――――ん?」
パチパチと二回瞬きをする。俺の目の前に立っているのは、めちゃくちゃ綺麗な金髪に、やや暗い紫色の瞳に、あの時を彷彿とさせるような黄金の輝きを放っている鎧。
10年前と、全く変わらない、お姉ちゃんの姿だ。
…………ん?お姉ちゃん―――――
「……おや?」
「あれ……新人クン?」
「………これは……気絶してますね」
「ハッ!」
「あ、意識が戻ったわね」
な……なんか先程の数秒程度の記憶がないのだが、目の前ではアーディさんが俺の顔をのぞきこんでいた。
……なーんだ。ヴィクトリア様がいたのは夢だったのか。びっくりしたなもう……。そうだよな、ヴィクトリア様がここにいるわけ――――
「少年?」
「おっふ………」
いた。めちゃくちゃいたし、なんならヴィクトリア様と目と目があっちゃったんだけど。昔と変わらずお美しい………っ!
――――君、大丈夫か?
大丈夫か大丈夫じゃないかと聞かれたら、全然大丈夫じゃない。さっきから心臓の鼓動がうるさくて仕方がないのだ。
「久しぶりだな、少年」
「は、はひっ……」
あかんて!あかんてヴィクトリア様!俺、そんな眩しい笑顔を向けられたら浄化されちゃう……っ!
「約束、しっかりと果たしに来てくれたのだな」
「そ、それは……当然です。だって、ヴィクトリア様との約束ですから」
この命救われてから、この約束を果たすためだけと断言していいほどに、俺は人生を歩んできた。この約束は、俺の生きる目標なのだ。
「さっきみたいに、お姉ちゃんと呼んでもいいのだぞ」
「え……俺―――じゃなくて、私そんなこと言ってましたか?」
「変に萎縮しないでいい。いつもみんなと接しているとおりにしてくれ、ユキナ」
「おっふ………」
ヴ、ヴィクトリア様に名前呼ばれた……俺もう召されてもいい。
「はいはい新人クン!昔話に花を咲かせるのはいいけど、そろそろルミネちゃんくるよ!」
「ハッ!そ、そうでしたね……」
意識が天に召されかけた俺の魂を手を二回叩いて引っ張り直してくれたアイシャさん。今日は、学校が休みの日らしく俺は街中に出かけるルミネさんの護衛としてついて行かなければならない。
「その、ヴィクトリア様……申し訳ないのですが、新人クンと一緒にルミネちゃんの護衛お願いできますか?」
「ルミネ?と言うと……なるほど、剣の姫君か。ユキナだけでは手を焼かすということか?」
「手を焼かすと言うよりも、自分の力を信じて襲撃者と直接戦ってしまうらしくて………めちゃくちゃいい子なんですけど」
「なるほどな。分かった。ユキナと一緒に護衛任務をしようじゃないか」
と、そんな団長とヴィクトリア様の会話をぼーっと聞いていたが、内容を理解した瞬間、変な声が漏れ出た。
え……?ヴィクトリア様と一緒に護衛任務………?ちょっと俺心臓持たない気がするんですけど大丈夫ですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます