第3話
「………一応聞いておきますけど、この学園に通ってる人達みんなあぁなんですか?」
「流石にそれは違うわよ。あの子が特別なだけよ。嬉々として自分を狙っている襲撃者をぶっ倒しに行くご令嬢が何人もいてたまるもんですか」
ご最もである。確かに、襲撃者相手に自ら率先して倒しに行こうとするご令嬢が沢山いるのならばそもそも護衛いる?って話である。
「所で、話は変わりますが、あれば今どのくらい壊しました?」
「んー、そうねぇ……」
と、アイシャさんがエントランスのテーブルから紙をガサガサと探し当てる。セルシウス曰く、大分減ったとの事なのだが。
「えっとね………うわ、計算したらもう300個以上も割ってるわね。あれ、結構そこら辺の石と変わらないのに……」
「騎士団の方々が優秀なのでしょうね」
俺なんか、ぶっちゃけセルシウスの助けがないとろくに見分けもつかないし。怪しい奴は普通の石だろうと割っている自信はある。
しかし、スネイクドラゴンは一体何を狙ってるのか。わざわざアバドンの一部を使用したり、それに何かしらの呪術が込められてたり。
そりゃ確かに、ルミネさんを殺せばメリットが出てくる貴族とかもあるだろう。例えば時期国王の座を狙っている流派とか。
だけど、ここまでやるものか?普通……。
「団長はどう思います?この関連について」
「そうねぇ………アバドンの体を使ってるから、アバドンの復活を目論んでるとか?」
「団長……流石にそれはないでしょう……」
アバドンは、人類の文明が一度滅んだきっかけを与えることとなった怪物で、もう一種の災厄と捉えてもいいだろう。どこぞの神によって封印されたと記されているが、闇ギルドだとしても世界を破滅させることはしないだろう。
「だよねぇ……流石に無いわよねぇ…」
自分でも言ってて「ないわー」とか思っていたのか、手を振って自身の言葉を否定した。
「さて、それじゃあ新人クン。今日は私と見回り行きましょうか。本当はもっと早く君と回りたかったけど、アーディが邪魔を――――」
「クルックー」
「ん?」
「―――あら?」
カタン、と音を響かせてこの拠点に入ってきたのは、一匹の白いフクロウ。見てみると、足の部分に手紙のようなものが括り付けられていた。どこから入ってきたのか探ると、拠点のドアの上にある押せば開くタイプの小さな木のドアからパサパサと入ってきて、俺の頭の上に止まった。
………なぜに俺の頭?
「あら!チャイミー!返事がもう来たの!」
「クルックー」
どうやら、このフクロウはチャイミーと言うらしく、俺の頭の上に止まっているこのフクロウを撫でに、アイシャさんが近寄ってきた。
ちょ!これ、あんま目線的によろしくない!?
鋼の意思を発動させて、なんとか目の前にある女性の象徴から目を逸らす。色んな意味で危険なため、早く要件だけやってアイシャさん!
自分の意思と戦い続けながら暫く待ち、アイシャさんが「ありがとね」というと、フクロウはもうひと鳴きしてからパタパタと入ってきたドアから出ていった。
「……団長、それはなんですか?」
「驚いた?これはね、応援を呼ぶための手紙よ!」
ばばーん!なんか効果音が着きそうなぐらいに自慢げに丸まっている紙を目の前に出てきたアイシャさん。俺も気になるので、アイシャさんに許可を得てから後ろから覗き見る。
「それで、どこに応援を頼んだのですか?」
「聖騎士様よ。流石に襲撃者が多すぎるのと………ルミネちゃんの暴走阻止のために」
「あぁ~」
納得した。ものすごく納得した。この国最高の称号である聖騎士が言葉を出せば、あのルミネさんでも流石に大人しくなるだろうと。
さすがです団長。
「どれどれ~」
どれどれ?
『王立アワレティア女学園警備及び護衛騎士団団長、アイシャへ。その要請に応えようと思う。しかも、そこは女学園なのだから私が行っても構わんのだろう?早速だが明日合流する。よろしく頼む。聖騎士ヴィクトリア』
「…………ようやく、か」
王都アワレティアにて、ごく一部の人しか滞在を許されていないアワレティア城の一室にて、羽根ペンを置くと後ろを振り返り窓の外を見た。
紙をクルクルと巻き、窓を開けると、指笛を鳴らす。すると、どこからか白いフクロウが飛んできて、その足に先程書いた紙を結びつけた。
「アワレティア女学園のアイシャに届けてくれ。頼んだぞ」
「クルックー」
ひと鳴きすると、パタパタと去っていくフクロウ。その女性は、フクロウが見えなくなるまで見送ると、机の上に置いてあった紙を一枚持ち上げると、優しげな眼差しになった。
「約束、忘れずにきちんと果たしに来たのだな、少年」
聖騎士ヴィクトリア。それが彼女の名前である。
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新作出してます。そろそろみんな大好き乱数調整のお時間です。
『天職:TAS』
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