第7話

「君は、結界装置についてアイシャからなにか聞いている?」


「いえ、全然全く」


 まぁ魔道具だろうなぁとは思うけど、どんな大きさで、どんな形をしているのか、どこにあるのかなどは全くもって知らない。


「そっかそっか……そしたらきっとビックリするだろうね!」


「ビックリ?」


 一体何が起こるのだろうと思いながら、機嫌よく鼻歌を鳴らすメーテさんの後ろを着いていく。どこに向かっているのかを聞いてみたいが、多分この様子だと着いてからのお楽しみとか言われそうだ。


「さ、着いたよ」


「……ここですか?」


 そして、メーテさんが足を止めたのは、この学園の中心部分に当たる中庭。中庭の真ん中には誰かの銅像が建っており、周りは色とりどりの花が咲いていて、花園と勘違いをしてしまうほどに美しい光景だ。


 しかし、どこをどう見ても結界装置とやらは見つからない。もしかして、そこら辺に適当に置いてるのだろうか?……いや、流石にありえないか。大事そうな装置だし。


「不思議でしょ?」


「……えぇ、まぁ」


「まぁ仕方ないよ。私だって最初に連れてこられた時は不思議に思ったんだもの……さ、装置を動かすからこっちにおいで」


 と、メーテさんは俺の腕をとって銅像へと近づく。絶対に動いたらダメだからね、と言われて頷き、メーテさんの行動を見守る。一体何をするつもりなのだろうか。


「えっと……この辺に……あった!」


 ガシャコン!という音がなると同時に地面が振動しだす。


「な……なっ!?」


「大丈夫大丈夫。特になんにも害はないから」


「と言われましても!?」


 生まれてこの方、地面が振動し出すなんて経験は一度もしたことが無い。メーテさんは腰に手を当てて堂々としているのに対し、俺は地面に手をついてしまう。


 そして、ついに――――銅像周りの地面が下に下がり始めた。


「えぇ!?」


「いい反応だねユキナくん!私はその反応が見たかった!」


 あっはっは!と盛大に笑い出すメーテさん。こんなの経験したら誰も驚くと思いますけど!?


 そして、メーテさんが懐から魔力で光る魔道具、『ランプ』を取り出すと、当たりが暗くなる。上を見ると穴がいつの間にか塞がっていた。


「……これ、どういう原理なんですか?」


「それは分からないかな。何せ、設計されたのが300年以上も前の話だから」


 しばらく降下し続ける地面に乗っていたが、だいぶ慣れたので、今はメーテさんと同じようにしっかりと二本足で着くことが出来ると、急に辺りがピンク色に光出した。


「―――っ!これは………」


「これが結界装置だよ、ユキナくん」


 不思議に思って、周りを見渡し、後ろを向いたら、ピンク色に光る巨大な水晶が安置されてあった。


 まだ地面に完璧に着いていないため、目線が水晶の先から先まで見えるが、きっと着いたら思いっきり見上げても先端は見えないだろう。


「……へぇ、これは見事なものだね」


 ……セルシウス?


 結界装置を見ていると、俺の体の中からセルシウスが出てきて、俺にしなだれかかってきた。


 ちなみに、セルシウスの姿は俺にしか見えないため、ここでセルシウスと問答すると、虚空に話しかける変人となるので注意が必要である。


「これほどまでに魔力を放ちながらも、こうも近くにいかないとボクでも感知が難しい装置……正しく、これを作ったやつは天才だ」


 と、セルシウスが褒めちぎるので、俺は目を見開いた。すると、それを不満げに思ったセルシウスが少しだけ頬を膨らまし、頬をつんつんとしてきた。


「ちょっとユキナ……?ボクだって褒める時はあるからね?」


 え、でもお前って何かとイチャモンつけて――――いえ、そんなことないですねうん。


 余計なことを言いかけ、頬に触れる指が少し冷たくなったので速攻で訂正しておいた。


 そして、降下していた地面はついに地上に着いたので、メーテさんが歩き出した。


「おいで、ユキナくん」


「は、はい!」


 水晶の大きさに圧倒されながらも、メーテさんの後に着いていく。セルシウスも、まだ外に出ているようだ。


 メーテさんについて行きながら、水晶の麓まで近づくと、何かの魔道具らしきものが見える。全体的に四角形みたいな形なのだが、上部分が扇のような形になって出っ張っている。そして、その出っ張っている部分だけ、何やら材質が違うように感じる。


「これが、結界を操作している端末っていうんだけど、これで結界に弾かれる弾くの操作をしたり、結界に異常がないかを確認するの」


 と、説明しながら、メーテさんは端末と呼ばれた魔道具に触れると、何か細かい四角が沢山ある物が浮かび上がり、カタカタと音がしだした。


「それじゃユキナくん、今から私はメンテナンスをするから、少し待っててね」


「わかりました」


 そして、俺はメーテさんの作業を後ろから見守り続けた。


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