第5話
ミカエル先輩から何やら危ない話を聞いたような気がしたが、それ以外は特にただただ会話をするだけで終わった。
ミカエル先輩はこれから外回り警備らしく、「また一緒に食べようねぇ!」という嬉しい誘いを貰ってからエントランスに向かう。
これから、アイシャさんに説明を受けて、本格的な仕事が始まるのだ。
「来たわね、新人クン。こっちにおいで」
と、アイシャさんの目の前にある椅子に、ここに座れと指を指したので、そこに座っておく。
「さて、それじゃあこの騎士団についての説明と、仕事の概要を説明するわね」
「よろしくお願いします!」
「いい返事ね。所で、新人クンはここに配属されたと決まった紙を見て、疑問に思わなかった?」
一瞬何がと思ったが、直ぐに思い当たった。
「あれですね、『王立アワレティア女学園警備及び護衛騎士』」
「そう!それよ」
パチン!とアイシャさんが指を鳴らした。もう一度振り返っておくが、本来ならば聖騎士見習い、偵察騎士、護衛騎士、番兵騎士、警備騎士、見回り騎士の六部隊しか存在しておらず、あげた順から要求される腕前が高く、危険性が高い。
警備及び護衛騎士なんて、事前説明とかで聞いた覚えなんてない。
「まず、周知に知られている六騎士部隊と、この警備及び護衛騎士はね、そもそも仕えている場所が違うのよ」
と、アイシャさんが後ろにある黒板に書き出す。
「六騎士部隊が仕えているのは王国――――つまり、王になるわけなのだけれど、この騎士団は世界に仕えていると言って過言ではないわ」
「世界……?」
いきなりの規模の大きさに眉を潜める。
「そう。この学園には世界中から立派な淑女になりたいためにご令嬢達が集まるのだけれど、愛娘を一人で送り出すなんて親御さんも心配でしょ?だから、騎士団で実力が高い人を護衛につける。それが長年行われ、今の騎士団という形が出来上がったの。だから、厳密に言えばここって騎士団じゃないのよ?」
「え、騎士団じゃないんですか?」
「そうよ。ただ、騎士団出身しかいないから騎士団って名前にしてるだけだし、国からの強制命令もないし、騎士団と連携してるところもあるし」
それならそれで別の疑問が生まれるんですが……。
「じゃあどうして君がここに配属されたのかっていうのは、実力が高く、生徒に悪影響を与えない人を騎士団の方から人材をくれっていうお達しが出ているからよ」
「そうなんですか……」
実力が高いと認められているのは嬉しいが……。
「そして、もはや傭兵のような私たちの仕事は、昨日新人クンが経験した学園内の見回りと、有事の際の生徒の護衛、そして生徒からの依頼に応えることよ」
「依頼ですか?」
「そう。依頼」
と、言うとアイシャさんは「えーっと、確かこの辺に……」と紙が散乱してある机から一つの紙を取り出すと、俺に渡してきた。
それを読むと、一番上にその生徒と思わしき名前が書いてあり、その下に用件、そして指名欄が書いてありその他もろもろ。一番目立つのは用件についての内容説明だろうか。そして、これは丁度、目の前にいるアイシャさんの名前が書いてあった。
「それが依頼書よ。訓練に付き合ってだったり、お悩み相談だったりと、多感な十代の子達の悩みを解決させるために作られたシステムよ。勿論、報酬もあるわ」
「へぇ……」
この紙に書かれていたことは、今度学園の外に出るのでアイシャさんに護衛を頼みたいとの事だった。報酬なんかは書いていなかった。
「とりあえず、一通りの説明はこの通りだけれど……質問とか、聞きたいこととかある?」
「あ、ありますあります」
「はい、どうぞ新人クン」
と、何故か教師みたいな振る舞いをするアイシャさんに、俺がずっと気になっていることを言った。
「学園のセキュリティどうなってるんですか?」
「あー……あぁー……そこねぇー……うん、なんて言えばいいかなぁ……」
と、アイシャさんは顎を手を当てて言い淀む。
「この女学園の周りには結界が張られていて、関係者じゃない人を自動的に弾き飛ばすという働きをしてくれるの。でもね、最近はその結界があんまり作用して居ないようなのよ」
「壊れてるんですか?」
「壊れている――――とは違うのよ。装置自体はちゃんと発動しているのに……」
「原因は不明……ということですか」
「えぇ、困ったことに……」
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