第2話

 ランニングしながら、お互いの事をポツポツと話していたのだが、なんとルミネさんお姫様らしい。


 シーザリオン王国というものがあり、俺は聞いたことないのだが、そこは剣の国と言われるほどに、住民全員が剣術に精通しており、決闘による娯楽が盛んなのだとか。


 そして、シーザリオン王国は、その国で一番強い剣術使いが王になるというしきたりがあり、ルミネさんは現国王の娘さんなのだとか。


 それを聞いた瞬間、めちゃくちゃへりくだった態度にして、ルミネさんのことをルミネ様と呼んだのだが、気にしないでいいとの事なので、ルミネさんと呼ぶことにした。クラスメイトもそう呼んでいるのだとか。


 それならぜひ、俺のことも様付けはやめて欲しい。さっきアーディさんにはさん付けだったでしょ?様って付けられると、背筋がちょっと落ち着かないから。と、辛抱強く交渉したら、折れてくれて何とかさん付けをもぎ取った。やったぜ。


「そういえばだけどルミネさん。学園の生徒は俺のことどう思っているのか分かる?」


 ルミネさんは最初から少し好意的だったから良かったものの、少しだけ気になる。ほら、護衛の仕事とかあるかもしれないじゃん?


「そうですね……皆さん、興味津々ですよ?」


「へぇー、そうなんだ?」


 これはちょっと意外だ。ぶっちゃけ、ネガティブなことしか自分では考えつかなかったから、これは嬉しいかも……?


「はい、いつ辞めるかで」


「へ、へぇー……」


 前言撤回。やっぱり全然嬉しかねぇ……。


「この学園は、私みたいに何か趣味がある人にとっては楽しいのですが、大多数の人は厳しい授業のストレスを発散させるために娯楽に飢えていますので。それと、今ままで男の人は何度か来るのですが、直ぐに辞めてしまう人がほとんどですので」


「そうなの?」


 まだ配属されてばっかりだけど、皆いい人だよ?アイシャさんは美人で優しいし、アーディさんも美人で、色んなこと教えてくれますし。


「はい、主に不祥事を起こしてですね」


「えぇ……?」


 何やってんだよ先輩(男)………。


 まさかの既に居ない先輩(男)の事実に肩を落としながら校舎周りを走っていく。流石にもう何十分も走っているので少し汗をかいた。


「ところでユキナさん」


「なに?」


 今更だが、俺とルミネさんは似ている。別に身体的特徴とか、顔がとかではない。ただ、直観的にそう思う。だから、ルミネさんは俺の事を「ちょっと気になる」と表現していたのだ。


「もうそろそろ、折り返しですよね?」


「そうだな。もうそろそろアーディさんに指定された時間の半分だ」


「はい……そして、きっとユキナさんが思っていることは私と同じだと思います。嬉しいです」


「そうだな。俺とこんな可愛い子と思っていることが一緒だなんて嬉しいね」


 さて、俺とルミネさんのどこが似ているかと言うと、である。


「お手合わせ、よろしくお願いします!」


「こちらこそ!」


 つまり、一言で表すのならば『修行バカ』と言ったところだろうな。


 隣同士にいた俺達はワンステップ挟んで離れる。目測7mほど。そして、セルシウスの力を介して氷の剣を作る。何故かと言うと真剣は危ないからだ。木剣でもあればまだマシだったんだがなぁ……。


 いつも使っている長さの剣が出来上がる。勿論、今回は手合わせのために刃の方はケガしないように潰してある。当たれば普通に痛いけど、ルミネさんはここまで一緒に走っていて、余裕で俺と会話をしながら走っていたし、なにより剣の国出身なため、相当な実力者だろう。


 ちらりとルミネさんの方を見ると、ルミネさんも魔法で剣を作っていた。あれは炎か?


「「いざ!」」


 俺とルミネさんの声が被り、一瞬にして距離が縮まり斬り合いとなる。


 ガキン!と氷と炎がぶつかったのに、金属のような音が鳴り響く。パワーは俺の方が上だったが、技術で上手く受け流された。流石である。


「パワー、スピード、そして技術、申し分ないですね、ユキナさん」


「そういう君こそ、女の子とは思えないね」


「ふふっ、褒め言葉だと受け取っておきます――――ねっ!」


 受け流された後、もう一度追撃を測ったが、少しだけ鍔迫り合いになると、ルミネさんの力が一気に増して俺の剣が飛ばされる。マジかよと一瞬慌てたが、落ち着いてルミネさんの挙動を見てここは大人しく回避に専念することにする。


「ファンバード流剣術の真髄は、型に囚われない魔法の自由差を生かした『魔剣流』」


「うおっ!?」


 防御は間に合わないと判断したので、回避のために身を屈めたら切っ先がなんとクイっ!と曲がり、俺の方向に急転換してきた。これでは当たると途中で判断して、頭をかがめた勢いのまま後ろに転がりまた着地。


 額に汗が浮かび上がるのを感じた。


「なるほど……魔法で作った剣で戦う魔剣流ね……」


「ちなみに、私はまだまだ一本しか自由に動かせませんが、お父様は五本は軽く動かせますので」


「腕足りてなくね?」


 一体どうやって操作してんだよ。

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