第11話

 校門前に辿り着いた瞬間、絶対に俺ではない「スタッ」という足音が響いた。


「……おいおいおい」


「っ!騎士団か……いつもより早いお出迎えだな」


 いや、まぁ完全にたまたまなんだが、余計なことは口にしない。これで相手がいつもの侵入ルートが読まれていると勘違いしてくれたら良しだ。


 まぁ、これはこれで侵入場所が変わるかもという懸念が生まれてくるが、今は気にしない。


 遭遇した以上、騎士団としての仕事を果たすだけだ。


「シッ!」


「チッ!いきなり攻撃かよ……っ!」


 足に力を込め、一瞬で襲撃者に肉薄。右下からの切り上げに反応した襲撃者が、羽織ってる黒ローブの懐から小刀を高速で取り出し、防御する。


 カァン!という激しい音が真夜中の学園に鳴り響く。その音を聞いて、フード越しだったが、襲撃者の顔が歪むのを確認した。


「お前……っ!まさか……っ!」


「へぇ?」


 どうやら、襲撃者は俺が先程の一撃の狙いに気がついたようだ。まぁ、あからさまに隙をついた先手の一撃だったのに、襲撃者が反応し、あまつさえ防御も出来るくらいにまで速度を落としたからな。


「チッ……俺が防御することくらいお見通しってかァ……?」


「ご明察。別に、俺は俺一人で戦わなければならないとかないしね」


 俺は、襲撃者が必ず防御すると踏んだ上で、態と相手が反応できるくらいの速度で剣を振ったら、予想通りに懐から小刀を出したので、思いっきり相手の小刀に剣を叩きつけて音を増大させた。


 学園全部には届かないだろうが、この近くにいる先輩ぐらいには届いているはずだ。今頃、この音を頼りにこちらに向かっているはずである。


「どうする?大人しく捕まれば優しく気絶程度で済ませてやるよ」


「はっ、あまり『スネイクドラゴン』を馬鹿にするなよ……。お前を倒した上で任務を遂行させる!」


 もう一本、懐から小刀を取りだした襲撃者は、二刀流でこちらに肉薄する。しかし、今の俺はセルシウスから力の行使を認められており、魔法という第二の武器を十全に使うことが出来る。


「やれるものならやってみろよ」


 ふぅぅぅ、と息を長めに吐き出すと明らかに右眼に変化が起きたことを感じ取る。今の俺の右眼は、黒から銀色に変化しており、更には冷気が漂っているだろう。


「お前……右眼が……っ!」


「世界を一度、凍てつく夜に落とした氷の冷たさ――――お前は耐えられるかな?」


 セルシウスがやった凄いこと、なんか話してよ。と昔に話を振ったら、一度世界を凍らせたらしい。


 そのせいで危うくこの星が滅びかけ、ほかの神にしこたま叱られたとほわんほわん笑いながら言っていたこと。


 その力が俺に宿っているなんて、物凄く恐ろしいのだが、俺はヴィクトリア様に憧れているため、あの人が正義である限り、俺はずっと正義であり続ける。


 だから、この力は守るために使おうと決めている。今目の前にいる襲撃者のようなやつから、人を守るために。


「はっ、何を言っているかは知らねぇが、殺させ――――なっ!」


「気づいたか。お前の体が既に寒さで動きにくくなっていることを」


 踏み込んで俺に向かってきたのは良いが、温度変化に気が付かなった襲撃者は、自分の体が寒さで震えていることに気が付かなかった。


 一度踏み出したら中々止まらない。俺は、小刀をこちらに構えて突撃してきた襲撃者を剣で軽くいなしてから、剣を地面に突き刺した。


「コフィン」


 そして、そう呟くと地面から氷の塊が突き出て、襲撃者の体をあっという間に閉じ込めた。


「安心しろ、死にはしない。一時的な仮死状態になるだけだ」


 まぁ、こんなこと言っても向こうには聞こえてないだろうが。


 氷魔法『コフィン』。対象者を絶対零度の氷で閉じ込め、急激に体の温度を下げることで強制的に強制睡眠状態スリープモードに移行させる魔法である。


 なお、氷は発動者の意志で溶かすことが出来るため、何時でもコフィンに閉じ込められたやつは蘇生可能である。


「新人くん!」


「先輩」


 そして、現れた先輩。多分、ここから近い位置にいた人であろう。


「大丈夫だった!?なんかすごい音響いてたけど―――っ寒!?なんでこんなに冷えてるの――って何これ!?中に人がいる!?」


 先輩が、寒さで震えながら、先程氷で捕まえた襲撃者を見る。


「襲撃者です。死んでは無いので、情報源として活用してください」


「襲撃者!?というか新人くん、いきなり捕まえたの!?」


「はい。所で先輩、これどうしましょうか。団長にでも渡しますか?」


「え!?……えっと………うん!とりあえず副団長に相談しましょう!」


 と、この後先輩の近くにいたというもう一人の別の先輩が、応援としてアーディさんを連れてきてくれたのだが………。


「………うん、とりあえずよくやったわね。お手柄よユキナくん」


 と、アーディさんは思考を放棄していたようだった。


 とりあえず、あの襲撃者は朝まで拠点の方で冷凍保存しておくようである。



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一度、11話を投稿しましたが、個人的に納得できなかったので、また投稿し直しました。


そして、多々ある誤字、本当にすいません。自分でも確認しながらやっているのですが、どうしても出てしまって……優しく教えてください。

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