第9話
そして、一旦お昼休憩も挟み、殆ど休まないように見回りをアーディさんとしていたが、異常や、侵入者は見つからず。一瞬たりとも気を抜かなかったが、右眼が反応することななかった。
日も落ち始め、生徒たちが寮に戻る時間帯で俺の見回りは一旦終了。アーディさんはこれから寮周辺の警戒をするグループの指揮を取るのだと言う。
夜も夜で見回りがあり、流石に交代をしながらだが俺も出ることになっている。拠点に戻ると、アイシャさんから「配属日なのにこんなに忙しくさせてごめんね」と謝られたが、俺は気にしていないし、なんなら配属初日からめちゃくちゃ頑張る予定だったので、頼られるのは純粋に嬉しい。是非俺に任せて欲しい。
なので、深夜の見回りには俺が入ることに。巡回ルートは今日何回も見回りしたため、頭の中に入っているし、一番きつい時間帯は男がするべきである。と、アイシャさんを説得した。
時間まで部屋で待機との事だったので、食事だけ貰って今日与えられた部屋で精神統一をしておく。すると、徐々に右眼が熱くなるのを感じたので、彼女との接続が無事に成功したことに息を吐いた。
「どうしたんだい?ユキナ、僕を呼び出して」
「いや、お前があそこまで反応するのは珍しいなと思ってな。少し気になったから聞くだけだ」
まぁ半分は暇つぶしになんですけどね。そんなことを思ったら胸をつつかれた。そういえば、繋がってるから心も読めるんだっけ。
「全く、暇つぶしで僕を呼び出すなんて、後にも先にも君だけだよ」
「悪いな。他の用事があるのも嘘じゃないけど」
俺の目の前には、銀色の髪に、銀色の瞳が特徴の麗しい女の人が立って――――いや、立つというのは語弊があるな。浮いていた。
「ふーん?まぁいいよ。なんだいユキナ。神であり、君のパートナーとして、話し相手になってあげるよ」
セルシウス、という神様らしい。氷を扱い、世界を一発で氷漬けにできるほどの力を持つ神様らしい。
らしいと言うのは、俺が彼女のことを詳しく知らないし、それも彼女の口からしか聞いたことがないため。だってセルシウスなんて聞いたことないし。
彼女曰く、昔に色々とやんちゃして歴史から抹消された。なんて恐ろしいことを言っていたが、害がないため善き隣人&頼りになる相棒として俺の中に住んでいる。
彼女との出会いは本当に突然。森の中でえっらほっらとモンスターを狩っていたら、急に脳内に『君、面白いね』とかなんか聞こえたから、なんだ!?と思っているうちにぬるりと入られた。
いや、本当だから。嘘じゃないんだって。本当にぬるりと一瞬で入られたの。
そして、彼女の姿は俺しか見えないらしく、そのせいで一時期、俺が虚空に話しかける変人としてしばらく噂された。地味に心が痛かった。
彼女は氷が得意なのだが、別にそれ以外の魔法が使えないという訳では無い。なんだかんだこの神、俺に対してめちゃくちゃ過保護だから、怪我とかしたらすぐに回復魔法をかけてくれて治してくれたり、反応できてない攻撃を魔法で弾き飛ばしてくれたりとか、めちゃくちゃ頼りになるし、彼女を介してなら、俺も氷魔法だけだったら使える。
神というのは基本自由らしく、セルシウスの他にも力を貸している神はいるらしいので、特段神からしたら特別ではないらしい。俺らからしたら目ん玉飛び出るほどに特別な事だけど。
さて、話を戻すが基本神というのは平和を愛する。邪神とかになったら話は別だが、神は平和が大好きである。
セルシウスもそれは例外ではないが、どうにもこの神。ちょっと警戒を抱くレベルが高く、国一つが滅びるくらいのレベルじゃないと警告してくれない。
その時のサインが『右眼が熱くなる』であり、放っておくと、本当に手遅れになるので、あの日はあの男を追いかけた。
だから、セルシウスにあいつの何処が危険そうなのか聞かなければならない。アイツ単体が危険なのか、もしくはその裏で起きてることが危険なのか、ハッキリさせておきたかった。
「それで?セルシウスはどこが危険だと判断した?」
「うーん……ごめんね、ユキナ。実はそれ、僕もよく分かっていないんだ」
と、セルシウスはお手上げと言わんばかりに両手を上げて降参した。
「分からない?」
「そう。分からない。でもきな臭いのは事実だよ。僕の鼻がそう言ってる」
「なるほどな……」
「だから、気をつけてねユキナ。僕が君に力を使うのは、君のことがとても大切な存在だと認識しているからだ」
「お、おう……そうか」
そうして、真面目な顔で見つめられて大切発言されたら、自然と顔が赤くなってしまう。セルシウスは、俺の頬に両手を置き、耳元でつぶやく。
「気をつけてね。君なら大丈夫だと思うけど、無理はしないように」
「……あぁ、分かっている」
アーディさんにも約束したしな。その返答に納得したセルシウスは、俺に抱きつくように消えていく。胸の中で、暖かな感触が一瞬だけ現れる。
――――時間が来るまで眠っておいた方がいい。大丈夫、時間になったらちゃんと起こすし、なんなら夢の中で稽古つけてあげるよ。
――――それはめちゃくちゃ助かる。ありがとうな。
どういたしまして、の声を聞き、俺はベッドに寝そべる。すると、魔法をかけられたかのようにすぐに眠気が襲いかかってきたので、それに逆らわずに俺はその眠気に身を委ねた。
そして――――
「さぁ、やろっか」
目を開けたら、俺がいつも使っている無骨な剣を持ったセルシウスがいた。
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