第8話

「各自、厳戒態勢レベルAの配置につきなさい。二人一組を基本に、見回りを開始。学園長には私から伝えておきます。新人クンは、副団長と行動を共にするように」


「「「「了解!」」」」


 全員が一糸乱れぬ動きで敬礼をしたので、俺もコンマ何秒か遅れたが、なんとか胸に手を当てて敬礼の形をとり、了解と言っておく。俺が理解出来たのは最後らへんのみだが。


 パタパタと急いで出ていく団員たちを尻目に、俺はアーディさんの方を向き、指示を待つ。


「ユキナくん。配属されてから初日で仕事なんて悪いけれど、あなたにも出動してもらいます」


「分かりました」


 別に、初日から働くのは普通のことなのでは?と思ったが、なんでか騎士団の配属先に無かったのだから、あちらとは色々と違うのだろう。


「装備とか大丈夫かしら?ここにいくつかの装備はあるけれど」


「そうですね……自分は別に要らないですけど、念の為胸当てをお願いします」


 俺は、鎧が少々苦手だから、装備をするとしても必要最低限で、動きやすい胸当てを一番使っている。使っていると言っても片手で数えるくらいだが。


「時間が無いから、今日は私が適当に用意したやつで我慢してね。それじゃあ取ってくるから、君は外に出て準備をしてて」


「はい」


 アーディさんは物凄い勢いで走っていったのを見てから俺は外に出て、鞘から剣を出す。金属色に光り、俺の顔をその面に反射させると、俺の右眼がし、銀色に変わっていき、そこから冷気のようなものが溢れ始めた。


 ――――どこまでなら使ってもいい?


 ――――君に任せるよ。


 そして、剣に写った俺は、ニヤリと口元を歪ませると、目の色が元の色に戻る。


 と、言うことは徹底的に殺れということですね、分かります。


「ユキナくん!」


 剣を鞘に戻し、後ろを振り向くと、俺に向かって何か飛んできていたので、それをキャッチする。


「とりあえず、今日はそれね。歩きながら説明するから、頑張って着ながら聞いて」


「分かりました」


 と、そこそこな速さで歩くアーディさんに耳を傾け、一文字を聞き漏らさないように集中しながらも、俺は胸当てをそそくさと付けていく。


「まず、厳戒態勢レベルAというのは、普段は交代で見回っているけれど、短期間全員で警戒に当たらなければ行けないレベルという意味よ。他にもあるけれど、今はこれの概要を覚えて」


「はい」


 よいしょ……胸当てしたけど、やっぱなんかまだ違和感がある。やっぱりない方がいいな。


「見回りをしている騎士のペアがもし、襲撃者に襲われてもすぐに駆けつけられるくらいの距離を等間隔に空け、見回りをするの」


「ですが、この騎士団に所属している人数は俺含め51人ですよ?前までは偶数だったからちょうど良かったものの、一人、あぶれる人がいますけど」


「大丈夫よ。一人の担当は団長がいくもの」


「団長が?」


「ええ。団長はヴィクトリア様以外に負けたことないの。だから逆に誰かいたらその人が足でまといになっちゃうから」


「そ、それは……」


「だから、安心して戦っても大丈夫よ、ユキナくん。団長なんて、心配してもしなくても、圧倒的強さでどうせ無傷で帰ってくるのだから」


 それなら安心である。


「今、生徒たちは授業中。昼の襲撃はほとんどないけれど、有る可能性もゼロというわけではないから、何時でも気を抜かないようにね。さ、始めるわよ」

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