第4話
「ヴィクトリア様ってあのヴィクトリア様!?」
「はい、団長が思っているあのヴィクトリア様です」
八人いる聖騎士の中で、唯一の女性としてヴィクトリア様がおり、今までの歴史で女性が聖騎士の位にまで至ることはないのと、美人でいて、クールでカッコイイ性格から、同性からの人気が物凄いのである。
クール、とは初対面の時に俺は思わなかったけど。俺がどうしたらヴィクトリア様みたいになれますか?って聞いたらあわあわしてたし。
「いいなぁ……ヴィクトリア様に会えるだけでも幸運なのに、助けて貰って挙句の果てには会話もして頭なでなで?私以外に話したら絶対に殺されるから、これは秘密ね」
「そ、そこまでですか……?」
ヴィクトリア様の人気具合は、ここに来るまでに色々と調べており、まぁなんとやべーことになっていることは把握済みだ。
しかし、このアイシャさんの冗談とも言えない雰囲気に、生唾をゴクリと飲み込んでしまう。
「新人クン。ヴィクトリア様を慕っている女性騎士はほぼ全員と言っていいほど存在し、信仰の域にまで達しているの。この前、ヴィクトリア様を遠目でみっちゃったー!ってキャッキャッ言ってた騎士が、その目よこせー!と全員が赤くなった瞳で追い回すという謎構図が出来上がったわ」
「そ、それは………」
きっと、アイシャさんの様子を見る限り、それを鎮めたのはアイシャさんなのだろう。なんか拳強く握ってるし、なんか全体的に黒いオーラ出てきてるし。
(うん、このことは絶対に話さないでおこう。墓の中まで持っていく)
俺は、アイシャさんに迷惑をかけないために強く誓った。
「――――コホン。さぁ、着いたわよ新人クン。ここが今日から、私達の仕事場&拠点となる場所よ」
「………でかいですね」
最初に見て思ったのはこの感想だった。一瞬、少々小さめの貴族の館かと思ってしまった。
「今日は顔合わせがメインだから、詳しいお仕事は明日説明するわ。荷物の整理もあるだろ――――」
ここで、アイシャさんはハッ!となにかに気づき、口を止める。それに疑問に思った俺は首を傾げる。
「団長?」
「………新人クン。君は今日からどこに住むのか聞いてる?」
「いえ、特に聞いていませんが……」
これからもあの宿屋を普通に利用しようと思っているが騎士として仕事をして、給料でも出たらどこか家でも借りようかなとは思っているが。
「参ったわね……全く。ミーミルはもう少しそこら辺をキチンと伝えることをした方がいいとこの前言ったばかりなのに……」
「……団長?」
頭に手を置いて何かしらブツブツと呟くアイシャさん。ミーミルさんとやらは誰なのだろうか。
そしてその時、ガチャりと目の前のドアが空いた。
「あら、団長――――と、噂の新人クンね」
「どうも」
出てきたのは、綺麗な水色の髪と琥珀色の瞳をした、これまたアイシャさんに負けず劣らずな美人さんだった。
……なんか美人さんの比率おかしくない?騎士団。
とりあえず、ペコリと頭を下げておく。
「良かったわ、中々団長が帰ってこないから、少し心配していたの」
「心配ですか?」
「えぇ。最近、かなりの頻度で襲撃者が侵入してくるから、それに巻き込まれているのかと。でも無事で良かったわ」
おおう……笑顔が眩しい。
「男の子が来てくれて助かったわ。男手が少ないから、色々と重いもの持ってくれることだしね」
まぁ、男手が少ないのはそりゃそうだよな。そもそもここ女学園なんだから。ここで働いている男性騎士の方はどれほどの鋼の意志を持っているのか気になるところである。
「あ、アーディ!それ以上はまだ――――」
「男性一人は、中々きついかもしれないけど、頑張ってね。私も色々とフォローするから」
「え?」
「あ……」
「…………あら?」
三人の時が止まった。なんて?今この人なんて?
「…………団長?」
「………団長、ミーミルさんは」
「あっはは……ごめん」
待って。なんだか俺、凄く嫌な予感してきたんですけど。
男一人………?なにそれ、新手の地獄?それとも、新人の俺の緊張を解すために吐いた嘘?
「……団長」
嘘ですよね?そうですよね?と期待を込めた視線をアイシャさんに向ける。
「あははは………ごめんなさい!新人クン!」
「団長ぉぉぉぉ!!」
朝の学園に、俺の悲鳴が響いた。
天国にいるお父さん、お母さん。
念願の憧れの職場は、どうやら女の人しかいないようです。
後に判明する。俺がここに配属された理由は、それを決めるミーミルさんという方が、俺の『ユキナ』という名前を見て女の人だと思ったかららしい。
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