第2話
次の日、なんと驚き18時間睡眠とかいう訳分からない数字に自分自身で驚いた。なんなん、18時間睡眠って。
そのせいで、中途半端な時間に目覚めてしまった。朝すっ飛ばして昼夜も胃の中に何も食べ物を入れていないため、空腹をお腹が訴える。
しかし、時間帯は深夜と言ってもいいだろう。流石に何時間かすれば朝日が顔を見せるだろうが、既に俺の腹は限界である。
「外、行くか……」
ワンチャンの可能性をかけて、とこがこの時間帯でも空いている飯屋を探さねばなるまい。
他に泊まっている人を起こさないように宿屋から抜け出す。腰には念の為に、昔から使っている銀色に輝く剣が帯剣されてある。
「……ん?」
そして、目に入ったのは屋根を全速で駆けて行く人の影。影が自分に降りかかったから気が付けたが、見ただけでわかるほどに実力者である。
そして、同時に右目が熱いと錯覚してしまう程に熱がたまる。どうやら、彼女はあの人物は危険だと判断したようだ、珍しい。
「……しょうがない」
まだ、騎士ではないが早めの仕事というのも悪くは無いだろう。
俺は、バレないように先程の人影を尾行し始めた。
謎の人物が駆けて行った方向から、大体の位置を予測し、目的を考えてみる。確か、あの方向は数多くの貴族達が居を構えている貴族街になるはず。
そして、そこには俺が配属される予定であるアワレティア女学園がその中心にある。
(………まさか)
俺が思っていることがまるで『当たりだ』とでも言いたいかのように、またもや右眼が熱を持つ。
それに、眉を顰めながら俺はスピードを上げ、王立アワレティア女学園の門前に陣取った。方向から、多分俺の目の前に来るだろうからな。
そんなことを思いながら上を見ていると、数十秒後に、月を背に一人現れる。
「……まさか、もう情報が回っているとは、流石は騎士団と言ったところか」
「……………」
声と背丈からして男。顔はフード付きマントで隠れていて分からない。そして、見える場所に得物がないのを見ると、そのマントの中に隠し持っていと見た。
「だが関係ないな。こちらを仕事を全うするのみだ」
「俺はまだ騎士でなないが、これからなる予定でな……少しばかり早い勤務だが――――仕事をさせてもらおうか」
具体的な仕事内容は全くもって知らないが、警備及び護衛騎士なんてあるのだから、学園に侵入する不届き者を討伐するのが仕事なのだろう。女ばかりが通う学校だ。不埒な考えを持った奴が侵入する可能性だって無きにしも非ずだろう。
「っ!」
一瞬の踏み込み、からの自身の身体能力を最大限発揮した加速で迫る。
「―――ぶな」
右眼に熱が宿り、瞬きをした瞬間、目の前に月の光を受け煌めく刃を視認したので、少しだけ顔を横にずらしてから回避。少しだけ頬が切れた気がするが、怪我なら彼女が治してくれるから問題ない
「なんと――――」
「――フンっ!」
驚いた声色を出しながらも、そこはプロなのか。マントから短刀を取り出し俺からの一撃に対応しようとする。
それに構わず、俺はそのまま切りつけたが、男は一瞬の鍔迫り合いの後、上手く刃を滑らせて受け流すことに成功した。
――――巧い!
先程だけの一瞬で相手の技量を確認。好機とみたのか、男は蹴りを放とうするが――――
「何っ!?」
「フンっ!」
本気で焦ったような声を背中越しに聞いた。俺は、剣を受け流されたことを利用し、その勢いを利用して回転をし、左足で男の胴体を蹴りつける。
その時、足を通じて金属の硬さと、ガンッ!大きな音が響いたので、マントの中に大量の金属――――刃物類があることは確定だろう。
「……大してダメージにはなってないか」
「………いや、まさかこの俺がたった一撃でこれほどにダメージを貰うとは………錆びたものだ」
蹴られた場所を教えながらフラフラと立ち上がる男は。俺は、もう一度剣を構えて踏み込む準備をする。
「ここは、一旦引かせてもらうか」
「行かせると思うか?」
「いいや、無理にでも撤退させてもらう」
そして、また投げナイフかと思い、避ける準備をしていたが、男が取り出しのは――――
「………チッ!」
「さらばだ」
―――煙幕弾だった。知識としてだけなら見た目は知っていたので、すぐさま踏み込んだが時遅く。それを地面に叩きつけられてしまった。
「………逃げられたか」
煙に何が含まれているか分からないので、目と口を守りながら後退。完全に霧が晴れた時には既に男の姿は無かった。
とりあえず、初手に投げられた投げナイフは回収しとくか。証拠になりそうだし。
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