第1話

 聖騎士とは、実績を積み重ねた騎士がなれる、非常に誉な称号である。


 しかし、聖騎士になる道はイバラの道であり、一生をかけてもなれないとされており、何か国がひっくり返るような大きな功績を上げた人しかなれないという、そんな噂がある。


 現在、この国――――アワレティア王国には、聖騎士と王に直々に認められた騎士が8名いる。他の国に、似たような称号で『勇者』なんかもあるが、個人的には聖騎士の方がかっこいいと思う。


 そして、聖騎士になるための前提条件として、王都アワレティア騎士団という、普段は街や国の警備をしている『騎士』というものにならなければならない。


 そんな俺――――ユキナは昔、とある聖騎士に救われ、憧れてしまい『いつかあの人の横に立って戦う』との約束を果たすため、15歳の誕生日を迎え、入団テストを昨日受けたのだ。


 騎士になるためには実力が何より必要で、入団試験は試験官役の騎士を相手にどれだけ戦えるかという内容だった。


 そして、その結果が早くも今、俺の手元にあるのだが、結果を見てしばらく頭にはてなマークを浮かべていた。


「……おかしい」


 別に、俺の頭がおかしくなった訳では無い。一時期、親に虚空に向かって会話をしていたのを見られた時はかなり頭の心配をされたが、これは手紙の内容がおかしいという意味である。


 入団試験に合格した人は、六つある部署の内、どれか一つに配属されることとなる。選定基準は騎士相手にどれだけ戦えたかというのが基準である。


 まず、最初に街や村へ赴き、見回りをして犯罪が起こってないかの確認をする『見回り騎士』。


 街や村近くに現れたモンスターを倒す『警備騎士』


 主に、門番として街や国境へ赴き、危険人物が入らないように目を光らせる『番兵騎士』


 要人の護衛を主な仕事とする『護衛騎士』


 遠くへ赴き、強力なモンスターが街や村に近づく前に討つ『偵察騎士』


 そして、聖騎士になるためにはこの部署に入るのが一番近道と言われている、『聖騎士見習い』


 聖騎士見習いというのは、主に偵察騎士や護衛騎士から、聖騎士が直々に『使える』と判断した騎士を近くに置いて聖騎士としての心構えを教えるというものだ。


 だから、いきなり俺が聖騎士見習いになれる訳がなく、個人的には偵察騎士辺りに配属されれば満足と思っていたのだが、俺の手紙には『王立アワレティア女学園警備及び護衛騎士』と記されており、ご丁寧に三日後ここに行けと言うことも記されていた。


 ………おかしい。本当におかしい。


 まず、先程紹介した六つの部署じゃないし、学園警備及び護衛騎士ってどういうこと?


「……おかしい」


 だから、そう呟いた俺は悪くない。


 王立アワレティア女学園とは、この世界でも一位、二位を争う程に有名な学園でこの世の女子の憧れとかなんとか言われている教育機関だ。


 詳しくは知らないが、なんか他国から立派な淑女となるために王女やら皇女やらご令嬢やらが沢山通っているのだとか。なにそれ、普段から挨拶は「ごきげんよう」とか言ってそう。


 だがしかし、ここで一つ問題が浮上する。この際『警備及び護衛騎士』というのは……うん、まぁいったんいいだろう。


 俺がこれから配属される場所は女学園。もう一度言おう。『女』学園である。


「……はぁ」


 不安しか感じないのだが。大丈夫か俺。憧れのヴィクトリア様の隣で戦う前に過労死とかしないだろうか。女とはめんどくさい存在であることはよく知っている………と言うよりも、見ている。


 まぁでも………うん、多分なんとかなるか。最初は知らない配属先でやや焦りはしたが、もうだいぶ落ち着いた。ありえない現象と対面するのは慣れてるからな。慣れたくなかったけど。


 だがしかし、疲れたことは確かなので俺は精神的疲労をとるために寝ることにする。


 まだまだ太陽は高い位置にあるが知らん。こんなん寝ないとやってられんわこんちくしょう。

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