「妻はルーパー」
オレはとある大企業の社長。
若く美しい妻がいる。
最近その妻が鼻についてしょうがなくなっている。
なんに付け投げやりで見栄っ張りで、金遣いが荒い。
オレの稼ぎをほぼ全て服やバッグ、エステやネイルサロンなどにつぎ込むばかりか、ホストクラブへも通い詰め。
オレは見た目さえよければ内面のことはおおいに目を瞑れる人間だと自負している。
とはいっても、限度というものがある。
いかな美人でも毎日一緒に生活していたら慣れる。
実のところオレには、愛人がいる。こいつと違い家庭的かつ優しい女だ。
その女から先月言われた。子供が出来たみたいだと。
それを聞いてオレは、即刻妻と別れることにした。
妻とオレとの間には幸いまだ子供がいない。揉める種が少ない今こそが、チャンスだと。
しかし妻は、頑としてそうしようとしない。多額の慰謝料を渡すといっているのに。
そればかりか、どうやって調べたのか、わが社の粉飾決算についての話を持ち出し、離婚したらマスコミに暴露してやると脅してくる始末。
オレは思いつめた挙句愛人とオレの子、ひいては会社の未来のために妻を始末することにした。
彼女にけして分からないようその筋の組織に大金を払い、交通事故を装って殺す段取りをつけた。
当局にあやしまれぬよう、国内ではなく海外で。
作戦は万全だ。妻は何一つ気づかず、のうのうとこれまでどおりの自堕落な生活を送っている。
もうすぐ自由になれる。
そんなことを思いながらオレは、彼女を旅行に誘った。夜のバルコニーで。
「なあお前、今度の休み、一緒に海外旅行へ行かないか? たまには日常を離れて、二人でのんびりしようじゃないか」
妻はオレの顔を見た。それから、奇妙な笑いを浮かべた。
「その手を使うのこれでもう500回目よ?」
次の瞬間オレはバルコニーから落ちた。妻が突き飛ばしたのだ。
暗闇に落ちていく中、意味の分からぬ彼女の呟きが聞こえた。
「次はもう少し違う手を使って欲しいわ。もう飽き飽きだから。ていうか、出会わないようにしたいんだけどね、最初から……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます