小悪魔JKの秘密の件について
98話 それはあまりにも……
旅行が終わり、いつもの日常が戻ってきた。
「ありゃっしたー」
気怠そうな声で言う。
連休取った代償として休み明けは連勤だった。
毎日毎日、起きては仕事に行って、帰っては寝るの繰り返し……お盆シーズンは人が無駄に多いからさらに忙しいぜ……それに加えて欠員もでてるしな。
「星川のやつ……どうしちゃったんだよ」
熱海で別れて以降、星川とは顔を合わせていない。
長期に休むと職場に連絡があったみたいだ。
一体何があったんだ……まあ、俺には関係ないことだが、しかし、この穴埋めはとてつもなくしんどかった。文句の一つや二つや三つくらい言わなきゃ気が済まない。
ということで仕事中、俺は店長の目を盗み星川のLINEに、最近流行りの"ウシ娘モーモー牧場"のスタンプを連打して嫌がらせしたのだが……。
見事に既読スルーされてしまった……。
クッソ……既読スルーは一番辛いって、ウザいとかキモいとか何かしらの罵詈雑言を言われた方がまだマシだ。無視はしんどいって……ちくしょう!!
「……………」
一人になったカウンターを見てボーと考える。
そういえばあいつ、実家に行くって言っていたよな……実家の何かあったのか?
うーん。
「何ボーとしてるのゆーくん?」
「いや、ちと考え事を……」
「ふーん、もしかして湊ちゃんのこと?」
「え、あ、ああ……って」
目の前を見るとそこには朱音先輩の姿があった。
「朱音先輩!! なんでこんな所にいるんすか!」
「なんでって本を買う以外に本屋に行く理由がある?」
「いや、そういうことではなくてですね……」
口の減らない人だよ。全く。
「てか、朱音先輩ここら辺に住んでるんすか」
「いや、二駅離れた所、その近くの保育園で働いているよ、まあ着任してきたのは最近だけど」
そうだったのか、バイクで熱海来ていたからてっきりそっち方面に住んでいるものかと思ったが、バリバリ都内だったとは思わなかった。
「それにしてもなんでわざわざうちの本屋へ? 朱音先輩の家の近くにも本屋ぐらいあるでしょ」
「それはゆーくんに会いに行くために決まってるじゃん」
ニコニコしながら言う。
さっきは本を買うためとか言ってたくせによくいう。
「まあそれと今度、保育園で読み聞かせ会があるからその時に読む絵本も探してたの、ちょうどいいのがあってよかった」
「へぇーどれですか?」
朱音先輩がさっと本を取り出す。
それは絵本というにはあまりにも濃すぎた。
暗く、難しく、重く、そしてあまりにも子供向けとは思えなかった。
それは正にダークファンタジーの金字塔だった。
というか……。
「これベルセ○クじゃないすか! こんなん園児に読み聞かせたら保護者から苦情きますよ!!」
「えー、絵が綺麗で多いし読みやすいと思ったんだけどなーーそれに小さいうちから素晴らしい作品に触れるのはいいことだと思うけど」
この人、素でこんなこと言っているから恐ろしい。ある意味俺よりオタクしているかもしれない。
「とにかくそういう理由があるなら売れないです。この腹ペコあおむしで我慢してください。」
「えー全くしょうがないな……」
しぶしぶ腹ぺこあおむしを購入する、朱音先輩。
「それで、星川さんのことなんで考えていたの?」
会計が終わってもカウンターに居座る。
まあ人は少ないからいいんだけど。
「いや、あの後、なんか訳ありげに去っていったのが気がかりで。まあこうしていきなりシフトに穴開けて怒ってるのが一番ですけど」
「ふーん、連絡とかしたの?」
「既読スルーされました」
「ふふ……ドンマイ」
肩を叩かれる。
「でも、あんな急いでどこか行ったのは気になるよね……」
「そうですね」
しかし、実際何があったのだろう。
確かどこからか電話がかかっていたような。
両親……実家?
野暮用……うーん。
わからね。
他人の事情に首を突っ込まない主義だけど、どうも星川に対してはほっとけない気持ちが出てくるんだよな。
普段はからかってくるうざい後輩なのに。
……いや、そのうざい後輩キャラのせいか。
しかし文句を言いたい気持ちは変わらない。
いっちょ聞きに行くか。
「ちょっと俺仕事終わったら、星川のことを詳しく知る人物に聞きに行こうかなと思います」
「え? それって誰?」
俺はすっと息を吸い込んで吐くように答えた。
「"スティーシー"のところに!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます