97話 旅の終わりとそして……
お土産を買い終えて、もうあとは帰るだけ。
俺達は駅に戻っていた。
「ねぇ……最後もう一度足湯に入らない?」
那奈さんの提案により俺達は駅前の足湯に浸かった。
「はぁーーそれにしても色々あったな……」
足湯に浸かりながら俺はこの2、3日を振り返っていた。
本当に色々なことがあった。
朱音先輩の再会から始まり、
告白され。
次の日では西園寺さんと海で戯れ、そして香乃と溺れて変な夢を見たり。
そして夜に那奈さんに告白される……本当に濃い旅行だった。
色々あって疲れたけど、でも、振り返れば割と楽しかったな……。
「なんやかんや楽しかったね」
西園寺さんが呟く。
俺と同じことを考えていたらしい。
「うん! 久しぶりにこんな大人数と旅行して楽しかった!」
「はい、私も楽しかったです」
「うん……またみんなで行きたいね」
「ふふ、それにしても面白いね。こうしてバラバラの人生を歩んでいた私達が、今こうして旅行の終わりに浸っているなんて」
確かに朱音先輩の言う通りだな。
別に俺達、みんな同じ職場で働いていたり何か共通点があるわけでもない。
なのに何の因果かこうして6人で旅行をしていた……いや、因果はあるか。
「こうしているのも、みんなゆうくんと出会ったからだと思う。ゆうくんと出会わなければ私達が出会うこともなかったと思う」
「そうだね! ゆうちゃんがいたから! みんなと知り合えて仲良くなれた!」
「うん……私も……友達少なかったから……交流関係広がって嬉しかった」
「私も、久しぶりに楽しい人達と出会えてよかったよー」
みんな口にする。
そうだな……俺によってみんなが巡り合った。
そしてまた縁ができていく。
一人のキモオタから始まる出会いの数々。 そう思うと面白いものだな人生も……。
旅行の終わりを締めくくろうと俺はニヤリと笑い黄昏た。
「だけど……同時に私達は"ライバル"でもあります」
小声で星川が言う。
その言葉を聞いてみんな思った。
この関係はいつかは崩れていくと。
ずっとは続かないと。
俺が誰か一人を選択することによって……。
何も言い返せず俺達は黙り込んだ。
今後のことを考えながら。
すると
ブーブーブー
星川のスマホが鳴った。
「あれ、"ママ"からだ」
星川がスマホを手に取り耳に当てる。
「もしもし……うん……うん……え!? マジ!? ちょっと、勘弁してよ……私もう今年は嫌だって言ったよね……うん……うん、確かにそうだけど……うん……うん……はぁ……わかったよ……それでいつから……え!? マジかよ……わかった。とにかくそのまま行けばいいんでしょ」
電話を切り、すぐさま何かを調べ始める。
そして。
「すいません、ちょっと野暮用ができちゃったんで先行きますね」
そう言い星川が足湯から上がる。
「先行くって電車はまだだぞ」
「いや、ちょっとこれから別のところに行かないといけなくなったので……すいません」
「行くって、どこにだよ」
「ちょっと実家の方へ……それじゃあ時間もないので失礼します! た、楽しかったです!」
早足で星川は去っていった。
「あいつ……一体どうしたんだろう」
不思議に思いながらも俺達は星川に手を振った。
この時の俺はまだ夢にも思わなかっただろう。
この旅行の終わりの出来事が、
また新たな始まりを生むことを……!!
そして俺は思い知ることになる!
俺のモテ期がもたらす残酷な結末を……。
運命からは決して逃れることができないことを……。
……と言っておけば明日から始まる仕事ばかりの日々も少しは目を背けることができるかなと思い、思わせぶりに心の中で呟いてみた俺だった。
無限熱海編 ー完ー
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