93話 エロゲーみたいな展開には気をつけろ 

「はぁ〜〜〜!!」


 部屋についていきなりベッドに寝転がった。


 那奈さん……本気で俺のこと好きだったんだな……那奈さんだけじゃない、みんなそうだ。みんな俺のこと好きなんだ……ちゃんと答えないといけないのに、俺は毎回その答えをはっきり言わなかった……。


 今回も……。


 毎回思うが、最低だな俺。


 どうしてみんなこんな俺なんかを好きになるんだよ。

 

 …………


 いや、もうそうやって逃げるのはやめよう。

 

 ここはちゃんと俺も答えを出すしかない。


 あやふやにせず、ちゃんとみんなに答えを出そう……!


 いつかな!!


 ひとまず、今はこのあやふやで曖昧な関係を続けていこう!!


 そう思い、俺は布団を被って寝ようとした瞬間、部屋の電気が消えた。


 あれ、先輩ももう寝るのか。

 まあ、先輩も疲れているだろうしな。


 何も気にせず目を瞑ると、布が擦れる音が聞こえた。

 うわ、先輩着替えているのか。電気は消しているが、もっと童貞の俺に配慮してほしいな。


 まあ、今更その程度じゃなんとも思わないがな!


 余裕ぶってそのまま寝ようとした、

 その時!


「ふぇっ!!」


 俺の背中に人の感触……まさか、朱音先輩また!


「せ、先輩、今日は勘弁して下さい。もう疲れてて、う、ウェイ!!!」


 朱音先輩の方を振り向いた途端、俺は度肝抜かれた。


 なぜなら、服を着ていなかったからだ。


 パジャマどころか、下着一枚着ていない!!


 マッパだった!


「せ、せ、せ、せ、先輩!? な、な、な、な、何を考えているんですか!!」


 からかうってレベルじゃねぇーぞこれ!!!


 俺はすぐさま手で目を覆った。


「何って、誘惑してるんだけど」


「誘惑って、それにしても度が過ぎてるって!!」


「そうかな? 男の人って女性の裸好きじゃん、だから思い切ってね?」


「思い切りが激しすぎるだろ……」


「それでどうかな? 私の体、人に見せたことないからいいのか悪いのかわからないけど」


「どうって」


 その言葉に甘えて思わずチラッと見てしまった。

 白くて綺麗な体……というのが真っ先に浮かんだ感想だったが、それよりも衝撃的だったのが、なんと先輩、下も穿いていなかったのだ。


 やべぇ、生まれて初めて女性の"あそこ"を見てしまった……。


 喜びよりも罪悪感が脳を染める。


「うう……とりあえず服を着て下さい」


「ええ、せっかくだし、やってみようよ」


「え……やってみよう……ってなにをです?」


 恐る恐る聞いてみると先輩は「ふふ」と声に出して笑い、俺の接近して耳元で囁いた。


「エッチ……」


 そのワードを聞いた途端、俺の心拍数はさらに上昇した。

 いや、いや、いや!


「な、何を言ってるんですか! お、俺たち別に付き合ってないですし、それに、そういうのはもっと」


「もっとなに?」


 言葉が詰まった。


 と、とにかくだ。

 ここは何としても自分を保たないと、気を抜いたら欲に身体が流される。


「とにかく、一度落ち着いて一旦離れましょう」


「嫌だ」


 お淑やかだった先輩が、わがままな子供のようにそう言い放った。


「嫌だって……」


「だって、ここで離したらまた、ゆーくんはぐらかすでしょ」


「はぐらかすって」


 図星をつかれて、ドキッとしてしまった。

 確かに俺はいつもみんなのアピールを跳ね除けていたな。

 冷静に紳士ぶりながら。


「それに……ゆーくん」


 朱音先輩が甘い息を纏いながら言った。


「童貞卒業したいでしょ?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る